TOP スペシャルコラムドラッカー再論 分権的組織における共同体意識。

2023/01/30

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スペシャルコラムドラッカー再論

第351回

分権的組織における共同体意識。

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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連邦型組織および機能別組織という分権的組織に成功するには、企業全体に共同体意識が存在していることが必要だとドラッカーは言う。

 

「分権的組織とは多様性における統一である。いかに自立した製品事業部といえども、完全に独立してはいない。自立性そのものは企業全体の業績を向上させる手段にすぎない。経営管理者たる者は、自立させられているほど大きなコミュニティ、すなわち企業全体の一員としての意識を強くもつ必要がある。」(『現代の経営』、1954年)

 

しかし実際のところは、分権的組織においては「共同体意識の必要性」と言う問題は基本的に生じないとドラッカーはコメントする。
むしろそのような問題は、中央集権的な機能別組織でこそ発生するのだと。これは、中央集権的なマネジメントと機能別組織の局地的な忠誠心がセクショナリズムとなって反目しあうためだ。皆さんも容易にイメージできることと思う。
これに対して連邦型組織の場合は、局地的な忠誠心が事業全体のニーズと一致する。

 

マネジメントが共同体意識を育て、機能別組織のセクショナリズムや連邦型組織の島国意識から生じる遠心力を抑えるには、3つの方法があるとドラッカーは述べる。

 

「第一に、いくつかの重要な意思決定権はトップマネジメントにのみ付与することである。」(『現代の経営』)

 

事業全体やその将来に影響を与える意思決定の権限と、全体の利益を部門の野心やプライドに優先させる権限を、トップマネジメントに付与するという「一般福祉条項」と呼ぶべきものの設定が必要なのだとドラッカーは指摘する。

 

「第二に、連邦型組織や機能別組織の単位組織を超えて、経営管理者を異動ないし昇進させることである。」(『現代の経営』)

 

ひとつの事業部や部門を自身の一生の職場であると考える人は、「**社」の人ではなく「**部門」の人となってしまう。
自分の昇進が経理部門内の権力によって決定されると考える人は、企業全体への貢献ではなく、経理の専門能力を中心に考え行動するようになる。企業の発展よりも経理部門の将来に(だけ)関心を持つ。
これらいずれの人も、企業の一隅しか知らず、視野も偏狭なものとならざるを得ない。

 

これを回避するひとつのジョブローテーション策として、ドラッカーはマネジメントクラスに対しては出身部門以外のポストへの昇進を考えるべきとアドバイスする。
実際にドラッカーがコンサルタントとして関わっていた時代のGMは、上席の経営管理者は他の事業部での経験を持ち、...

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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