2022/12/28
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戦略人事の仕掛人
第25回
喜ばせるのは社員ではなくユーザー。いつでも“事業を伸ばすこと”を真ん中において考える。【後編】
- 組織
宿泊やレストラン予約を中心に、その質の高さと徹底したユーザーファーストの姿勢で多くのヘビーユーザーを持つ「一休.com」。運営会社の株式会社一休で初の人事最高責任者となった植村弘子さんを迎えての「戦略人事の仕掛け人」。後半では、ヤフーによるM&Aを機にここまで行ってきた組織づくりや制度設計の根底にある考え方や、植村さん独特のCHRO観、そして未来の一休や自身の姿について語っていただいた。
(前編はこちら)
(聞き手/井上 和幸)
“良い会社”づくりはしない。目指すは“強い会社・強い組織”
いまだ記憶に残っているという人も少なくないだろう。2015年12月、ヤフーが一休を完全子会社化したというニュースが駆け巡った。奇しくもその3ヵ月前に人事責任者となっていた植村さんは、M&Aに向けた準備がCHROとしての最初の仕事となった。インサイダーに抵触するため、TOBの事実は当然ながら極秘。“準備”といえば聞こえは良いが、植村さんの人事キャリアは、なにも動けない、誰にも話せないところからのスタートとなった。
井上 これはもう、「どうでしたか?」なんて聞き方ができるレベルの出来事ではないと思いますが、実際に発表があった後、社内はどのような感じだったのですか?
植村 業績不振で売却…というのはよくある話ですが、なにせ最高益をたたき出して「いま、自分たちは一番いい状態だ」と思っているタイミングでのM&Aです。誰も予想していませんし、ショックすぎて泣いているメンバーもいるような状態でした。創業社長が替わってしまうということも、追い打ちをかけていましたね。
井上 ある意味、ここからがCHROとして本当の初仕事であり、腕の見せどころだったと思いますが、人事の最高責任者としてまずはどうされたのですか?
植村 わたし自身は既に覚悟が決まっている状態です。自分の感情云々はとっくにおいてきているので、とにかくTOBを無事に進めて「ここからさらに伸ばすんだ、この買収を良いものにするんだ、それを絶対にやり遂げるんだ」ということしかありませんでした。
社員のショックは相当なものでしたが、わたしはこれを逆にチャンスととらえていました。“ヤフー”という大きなグループにジョインしたことを生かしてどう進んで行くのか。もちろん、日々いろいろなことは起こりましたが、「これはめちゃくちゃチャンスだよ。ここからめちゃくちゃおもしろいことをしていこうよ」ということは、全社へのメッセージとして繰り返し伝えていました。とにか...
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