2022/11/14
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スペシャルコラムドラッカー再論
第341回
経営管理者育成の原則。
- マネジメント
- エグゼクティブ
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
ドラッカーは、経営管理者育成の原則について、
・第一の法則:マネジメント層全体の水準の向上を図らなければならない
・第二の法則:明日を視野に入れたものでなければならない
と言う。
「(経営管理者育成は)常に明日のニーズに焦点を合わせる必要がある。明日の目標を実現するには、いかなる組織が必要か。いかなるマネジメントの仕事が必要か。明日の要求に応えるために、明日の経営管理者はいかなる能力を持つ必要があるか。」(『現代の経営』、1954年)
ドラッカーは、多くの企業がお気に入りの定期異動も適切でないと指摘する。
その理由は、特定の機能に習熟した者に他の機能を経験させることであれ、訓練のために様々な職務を経験させることであれ、事業をマネジメントする能力を養成するものではないからだと言う。
様々な機能、職種を経験させることではなく、事業を全体として見る経験をさせることによって、初めて幅の広い人間となるのだ、と。
「訓練のための仕事という考え方については、その基本的な誤りがあらゆる原則とあらゆる経験から明らかである。何びとに対しても、本当の仕事ではない仕事、すなわち本当の成果を求めない仕事を与えてはならない。」(『現代の経営』)
経営管理者の育成は、あらゆる経営管理者を対象としなければならない。
「それはあらゆる経営管理者に対し、成長と自己開発を促すべきものである。それは見込みや将来性ではなく、現実の成果に焦点を合わせる。今日のニーズではなく、明日のニーズに焦点を合わせる。それは機械的なローテーションによる静的な交代ではなく、動的、質的な活動でなくてはならない。」(『現代の経営』)
明日の経営管理者を育成するということは、つまるところ、今日の経営管理者全員を、より優れた、より大きな経営管理者にすることなのだとドラッカーは述べる。その通りだろう。
そして、その明日の経営管理者の育成には、独立した組織がそれを担うにはあまりに重大で複雑であるともドラッカーは指摘する。
「それは、経営管理者のマネジメントに関わるあらゆる問題、例えば経営管理者の仕事の組織化、上司や部下との関係、組織の文化、組織の構造などと深い関係がある。」(『現代の経営』)
ドラッカーは、機能別組織化された企業において、例えば人事部門が経営管理者を育成することは基本的には難しいという意見だ。
一方、連邦型の分権化された組織であれば、あえて経営管理者の育成のための活動をおこなわなくても、明日のための経営管...
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