2022/11/09
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成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」
第157回
「既存事業の深耕」と「新分野への進出」を同時に目指す“両利き”の時代へ /『中小企業のコンサル事例でわかる ランチェスター戦略〈圧倒的に勝つ〉経営』
- ビジネススキル
- 組織
- 経営
- 酒井 俊宏氏 日本実業出版社 第二編集部部長
成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」では、成功している経営者が注目している、読んでいる書籍をご紹介してまいります。
今回は、『中小企業のコンサル事例でわかる ランチェスター戦略〈圧倒的に勝つ〉経営』。本書の編集を手掛けられた、日本実業出版社の酒井俊宏氏に見どころを伺いました。
「ランチェスター戦略」は、幾度かのブームを経て、戦略のバイブルとしてすっかり定着した感があります。経営者の方々にも、理論や考え方はひととおり理解している方が多いのではないでしょうか。
その場合、ほとんどの方はランチェスター戦略を「既存事業の深耕」のための理論ととらえているようです。実際、多くの本がその部分の記述をメインにしています。
他方で、近年、経営の世界でしきりに取り沙汰されているのが、「両利きの経営」という概念です。その書名の本もヒットしています。そこでは、既存事業を深掘りすると同時に新しいジャンルの探索や進出に挑戦することの必要性が指摘されています。
コロナ禍で社会の様相や環境が大きく変化し、どの企業においても売上が立てにくくなっているいま、この2つに同時に取り組むことの必要性はいっそう増しているといえるでしょう。
では具体的に、どう実現するのか。
ランチェスター戦略コンサルタントとして数多くの指導実績があり、現在も多くのクライアントをもつ著者の福永雅文氏は、既存事業の深耕はもちろん、新分野への進出においても、ランチェスター戦略の導入と活用が大きく寄与すると考えています。そのことを、これまでの指導経験から体感してきたと言います。
本書では、福永氏が自身の実際のコンサル事例を通して、既存事業の深掘りのしかた(=特定市場でナンバーワンになる方法)と、地に足をつけた新分野への進出の進め方を解説していきます。
後者の、新分野への進出については、コミック本専門の包装機開発・販売というまったく新しいビジネスで急成長したダイワハイテックスと、多くの既存事業者が存在するトラックによる運送・物流に参入した照栄物流という、対照的な2つの企業を例にとり、それぞれが福永氏の考える新分野進出の「7つの戦略」をどう実現していったかが語られます。
福永氏の考える「7つの戦略」は以下のように、いずれも地に足のついたものです。
①製品開発戦略(→顧客との関係性を強化するなかでニーズを見つけ出し開発する)
②市場開拓戦略(→地域や顧客層の拡大を志向するなかで仕組みや売り方を開発する)
③転用による隣地型の多角化戦略(→技術や組織能力を転用して周辺市場や周辺機器に進出)
④見込み事業と受注事業(→それぞれ明確に意識し、併せ持つようにすることで新たなニーズを見出す)
⑤5つの販売方法(→訪問・店頭・媒体・配置・展示など販売方法を見直し商機を広げる)
⑥業務プロセスの拡大(→企画・設計・生産・販売といったプロセスを見直す。照栄物流は物流に保管というプロセスを加えることで顧客開拓に成功した)
⑦直接販売と間...
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