TOP イマ、ココ、注目社長! 検査数5年で2万件超。日本発の不妊治療向け細菌検査、世界へ。【後編】

2022/09/21

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イマ、ココ、注目社長!

第267回

検査数5年で2万件超。日本発の不妊治療向け細菌検査、世界へ。【後編】

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子宮内フローラ(子宮内に存在する多種・多様の細菌の集まり)の環境が乱れると体外受精の成功率や妊娠・生児獲得率が下がることに着目した「子宮内フローラ検査」。日本発のバイオベンチャー、Varinos(バリノス)が独自に検査方法を開発し、2017年に提供を開始。累計検査数は5年で2万件を超えています。(2022年8月時点)
今年に入って6億円を調達し、海外展開を計画しています。
後編では、創業者の桜庭喜行さんが起業してから現在に至るまでの道のりを尋ねました。

(前編はこちら)

(聞き手/川内イオ

理解者から得た5,000万円の出資とその後の試行錯誤

――2017年にVarinosを設立して、スタートアップの仲間入りをしました。大学を卒業してからずっと組織に属する立場だった桜庭さんですが、独立するのに躊躇はなかったですか?

 

桜庭 そんなに躊躇はありませんでした。むしろ、次世代シーケンサーの営業をしていて、多くの企業がその可能性を知りながら導入にしり込みする姿を見てもどかしさを感じていたので、この閉塞感を打破しよう、やってみたらできるだろうという感覚でした。

 

――起業の準備でずいぶん苦労されたとか。

 

桜庭 ラボが必要なバイオ系の事業を自己資金で始めるのは不可能なので、出資者を求めて事業計画書を書くところから始まりました。私も共同創業者の長井もそれまではイルミナの営業と研究者だったので、事業計画書の書き方を知らず、本を見ながらなんとか書き上げました。
その事業計画書を持ってベンチャーキャピタル(VC)をまわりましたが、ラボを作るのに必要な5,000万円を投資してくれるところはありませんでした。それは、私たちが論理的な説明や効果的なプレゼンに慣れていなくて、投資家を納得させられなかったという反省もあります。

 

ただ、VCを10件も回らないうちに、不妊治療に長年携わってきたひとりの医師がこの事業の意義や可能性を認めてくれて、出資を決めてくれました。本当にラッキーだったし、貴重な出会いだったと思います。

 

――ラボができてからも、試行錯誤が続いたそうですね。

 

桜庭 はい。子宮から採取したサンプルの解析の失敗が続いて、「これはちょっとヤバいぞ」という空気が流れました。長井は腸内細菌叢の解析のスペシャリストで、イルミナの時はその技術を全国の研究者に教える立場だったんです。腸内細菌叢の解析については日本の誰よりも詳しく知っていたので、彼女がやれば大丈夫だろうと思っていたんですけど、サンプルが便ではなくて子宮からとったものになっただけで...

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プロフィール

  • 桜庭 喜行氏

    桜庭 喜行氏

    Varinos株式会社 創業者/代表取締役CEO

    埼玉大学大学院博士後期課程修了、博士(理学)取得後、理化学研究所ゲノム科学総合研究センターにおけるゲノム関連国家プロジェクトや、米国セントジュード小児病院にて、がん関連遺伝子の基礎研究に携わる。帰国後、GeneTech株式会社で検査技術部長として、日本に初めて母体血から胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断(NIPT)を導入。その後、米・イルミナの日本法人にて、産婦人科分野の遺伝学的検査(NIPT、PGT-A)の市場開発に取り組む。その中で、ゲノム研究のレベルは海外と変わらないのに、日本には研究とビジネスを繋げる人材・会社が極端に少なく、日本の遺伝子検査業界が海外から大きく後れをとる状況を目の当たりにし、2017年2月、自ら、ゲノム検査の開発や受託検査を行うVarinos株式会社を設立。2017年12月、ゲノムテクノロジーを応用し、子宮内の細菌を調べる「子宮内フローラ検査」を独自開発・臨床検査として世界で初めて実用化。

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