2022/09/02
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イマ、ココ、注目社長!
第260回
超小型陽子線がん治療装置で多くの命を救いたい。【前編】
- 経営者インタビュー
- 経営
- 組織
- 注目企業
- 古川 卓司氏 株式会社ビードットメディカル 代表取締役社長
年間100万人を超える新規のがん患者。その治療法には、外科的治療(手術)に加え、薬物治療、放射線治療があります。特に陽子線治療などの放射線治療は、がんを安全かつ効果的に治療する方法として注目を集めています。しかし、ネックなのは治療装置が大型で高価なこと。そのため普及が進んでいないのが現実。そうした中で、株式会社ビードットメディカルは、従来にはない小型で低価格な陽子線治療装置の製造・販売に乗り出しています。
代表取締役社長の古川卓司氏は、放射線医学総合研究所(放医研)の研究員として放射線医療装置の研究開発に携わったのち、放医研発のベンチャーとしてビードットメディカルを2017年に起業。同社が開発した超小型陽子線がん治療装置は、現在薬機法承認に向けた準備中で、順調にいけば年内にも医療機器として認められる予定です。「少しでも多くのがん患者を救いたい」という思いから起業に踏み切った古川氏に、がん治療にかける思いとその現在地について、お話をうかがいました。
(聞き手/井上 和幸)
物理学のカッコよさに惹かれて物理の道を目指す
――学生時代は物理学を専攻されて、将来はそちらの方面を目指されていたそうですね。
古川 若い頃は、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹、朝永振一郎、小柴昌俊先生といった先生方に憧れていました。物理学がカッコよかったんですよね。宇宙はどのぐらいのスピードで拡大しているのか。ブラックホールとは何なのか。ニュートリノはどういった性質を持つのか。そういうことを追求するのにロマンを感じていました。それで大学は理学部で物理学専攻に進みました。
――子どもの頃に、物理が好きになるような環境が周囲にあったのでしょうか。
古川 祖父がプリンターの部品を作る町工場をやっていて、その影響が強いかもしれません。父親はそれが嫌で会社勤めをしたんですが。子供ながらに、どちらがいいか比較して「おじいちゃん、カッコいい」と(笑)。一国一城の主であるのはカッコいい、サラリーマンにはなりたくないと思っていました。自分の手で何かを作るのも好きで、プラモデルもよく作りました。今思うと、医療機器を作るという仕事にもつながっていたのかもしれませんね。
放医研での研究をきっかけに医療の道へ
――当初は純粋に物理学を研究したいという思いがあったわけですが、それが現在のような医療の分野にシフトしたのはなぜですか。
古川 転機になったのは、千葉大学で卒業研究を選ぶ時に、放射線医学総合研究所(放医研)での研究に手を挙げたことでした。実は、それまで物理学が大好きだった半面、「私の研究は人のためになっ...
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