2022/07/12
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敏腕キャピタリストの着眼点
第29回
自ら挑戦しまだ見ぬ景色を見ようとする経営者に投資したい。【前編】
- 経営
- 組織
「大きな仕事をするために」起業家の道も視野に入れながら社会に飛び出したという田島 聡一氏。シード期のスタートアップへの投資と経営支援を通じてレガシー産業のIT化や新規事業創出に注力し、東南アジア地域もカバーするベンチャーキャピタル、株式会社ジェネシア・ベンチャーズの創業CEOです。
前編では、ある意味真逆の価値観を持つ大手銀行在職時代と、サイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)の代表を務めていた経験から、独特の投資家目線がいかに培われてきたのかを伺いました。
“なりたい背中”を探して…大手銀行からサイバーエージェントグループへ
井上 新卒で三井住友銀行に入行されていますが、選ばれた動機はなんだったのですか?
田島 社会を人体に例えたときに、銀行は“お金”という血液を全身に送り出す“心臓”であり、“お金”という血液が戻ってくる場所でもある。また、お金の出入りには情報が付随するので、あらゆる情報が集約される場所でもある。お金を融資する仕事なので、若くしていろいろな経営者に出会える仕事でもある。
そういう場に身をおくことによって、自身の成長スピードを最大化したかったからです。ゼネラリストとしてのスキルを広く磨きたかったという気持ちもありましたね。
井上 なるほど。とはいえ、入行当初はなかなかご苦労もあったそうですね。
田島 そうですね。いくら「大きな仕事したい」と思って入行しても、やはり最初のうちは支店の窓口に配属されて納税の手続とかを担当する訳です。そうなると、生意気だった当時の僕は「こんなのはオレの仕事じゃない」といった態度で、細かい仕事をバカにしていました。当然、そういった社員は全く評価されないので「あいつ、生意気だけど仕事できないよね」と(笑)。
井上 ああ…(笑)。
田島 2年目になったころ、そんな僕を見かねた当時の副支店長に「大きなM&Aだってプロジェクトファイナンスだって1枚の伝票を起票するところからはじまるんだ。その伝票1枚すらまともに起票できないヤツに、大きな仕事なんて任せられるはずがないだろう」とこんこんと説かれまして、そのメッセージがいまでも覚えているくらいすごく自分の中で腹落ちしたんですよね。
それ以来、小さな仕事をいかに正確に、確実にやるかを強く意識するようになった結果、3年目からは銀行員として順調に成長することができたように思います。
井上 大企業融資やシンジケーションといったプロフィールにもあるような大きな仕事は、その副支店長さんの言葉があったからこそなし得たことなんですね。30代に差しかか...
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