TOP スペシャルコラムドラッカー再論 階層によるマネジメントの落とし穴。

2022/06/13

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スペシャルコラムドラッカー再論

第321回

階層によるマネジメントの落とし穴。

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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フラット型組織が言われて久しいが、ドラッカーはマネジメントの階層的な構造が危険を大きなものにすると指摘している。

 

「上司が言ったり行ったりしたこと、何気ない言葉、習慣、あるいは癖までが、部下にとっては計算され意図された意味あるものと映る。<建前では人間関係が重要だと言っているが、その実、呼びつけていうのは間接費の削減だ。ところがポストを手に入れるのは、経理への報告をうまく書く者だ>というたぐいの文句が、あらゆる階層で聞かれる。そのような状況では仕事の成果があがるはずはない。当の間接費の削減もおぼつかない。組織とマネジメントに対する信頼は失われ、敬意も失われる。」(『現代の経営』、1954年)

 

もちろん、そのように部下の方向づけを間違う上司も、わざとそうしている訳ではない。人間関係こそ重要だと、本当に信じていたりする。そのうえで間接費のことも言うのは、実務的なところも見せなければならないと思うからだ。あるいは現場の話をすることで、部下の抱えている問題を知っているんだよと示したいということもあるだろう。
経理に出す数字を重視するのは、上司自身が部下たちと同じく経理処理に悩まされているからであり、あるいは経理と揉めたくないからだ。

 

しかし、こうした上司の心情や背景の意図は、部下には分からない。彼らが目にし耳にするのは、間接費の削減であり経理への数字だけである。

 

「この種の問題解決には、組織に働く者の意識をそれぞれの上司にではなく、仕事が要求するものに向けさせることが必要である。経営書の多くが説いているように、行動パターンや姿勢を強調しても解決は得られない。逆に人間関係に意識過剰となって、問題を大きくするおそれがある。」(『現代の経営』)

 

部下の方向づけを誤らないようにしようとして自らの行動を変えたために、それまでの満足すべき関係が不自然で誤解に満ちたものになったという例はよくある。
意識過剰になれば、気安い関係も損なわれることが多い。「以前は何をして欲しいのかわかったけど、いまはまったく分からなくなりました。何を考えているのか、想像するしかないんです」。そんな風に上司への悩みをこぼす部下が、コロナ禍の中で急増している。

 

こうした悩みは、姿勢や行動パターンの変更では解決できない。問題は企業の構造に根差しているのだ。
コミュニケーションの改善を図ろう。そんな声掛けと取り組みに着手する企業も多いが、これでも解決できないだろう。なぜならば、コミュニケーションは共通の理解と共通の言語を前提としており、まさにこの事象が起きているときに欠けているのは、それらのものだからだ。

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。