TOP スペシャルコラムドラッカー再論 個別生産システムから2つの大量生産システムへの進化

2022/05/09

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スペシャルコラムドラッカー再論

第316回

個別生産システムから2つの大量生産システムへの進化

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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前回、ドラッカーの分類による3つの生産システムについて見たが、ではそれぞれの原理とは具体的にどのようなものなのだろうか。

 

「第一の生産システム、すなわち個別生産では、製品は自己完結的である。もちろん完全に個別的な製品などありえない。そのような製品は芸術作品だけである。しかし、船舶、大型タービン、高層ビルは個別生産である。家屋の建築や町工場におけるバッチ生産も個別生産の一種である。」(『現代の経営』、1954年)

 

個別生産の原理は、生産活動をいくつかの同質的な生産手段に組織することだ。
個別生産の典型例である家屋の建築には、4つの生産段階があるとドラッカーは解説する。第一の段階では、土を掘り、地下室の床と壁の土台にコンクリートを流し込む。第二の段階では、骨組みや屋根を組み立てる。第三の段階では、壁の内側に配管、配線する。第四の段階では内部の仕上げをする。

 

「家屋の建築では、これらのいずれの段階が完了したあとでも、相当の期間、作業を中断し放置しても支障はない。しかし一つの段階の中では、作業は継続して行う。さもなければそれまでの作業は無駄となり、時にはやり直さなければならなくなる。昨段階間の作業の違いは大きな問題ではない。特別の調整も必要としない。しかも容易に次の段階に移行できる。各段階は、製品すなわち家屋そのものの論理に基づいている。そして、いずれも独立した単位となっている。」(『現代の経営』)

 

このような段階別に作業を進める個別生産は、大工があらゆる大工仕事を行い、配管工があらゆる配管工事を行う、機能別生産とはまったく異なる生産システムだ。個別生産とは、機能別技能ではなく、段階別作業によって構成される。ある特定の段階の仕事に携わる者は、その段階で必要とされる作業をすべて行うことになる。逆に、各段階に携わる個人やチームは、その段階で必要とされる以外の技能は必要としない。

 

次に、第二の生産システムとして、大量生産がある。大量生産とは均一の部品から多種あるいは少種の製品を大量に組み立てることである。

 

「今日の製造業では、この大量生産が一般化している。当然のことながら、大量生産は工業化社会における典型的な生産システムとされている。しかし遠からずして、プロセス生産がその強力な競争相手となるに違いない。」(『現代の経営』)

 

ドラッカーはこの論考を執筆した時点(1950年代前半)で、大量生産について導入初期に間違った捉え方で適用したことが、当時の時点で40年ほども、大量生産を誤解のもとに行うことになったと指摘する。
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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。