TOP 社長を目指す方程式 上司が勘違い 良かれと思って「心理的安全性」を損ねる落とし穴行動

2022/04/28

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社長を目指す方程式

第89回

上司が勘違い 良かれと思って「心理的安全性」を損ねる落とし穴行動

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  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上 和幸

 

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今回の社長を目指す法則・方程式:

エイミー・エドモンドソン「心理的安全性」

 

今やすっかり一般用語化した「心理的安全性」。当連載でも過去のテーマの中で何度か触れてきましたが、その意味については必ずしも正しく理解されていないようです。上司の皆さんであれば心理的安全性とは何かを正しく理解し、なによりも自身のチームでそれを実現・実践したいですよね。

 

メンバーたちの自由な発言を妨げる4つの不安

「心理的安全性」とは、他のメンバーに対人的な不安を感じることなく、自分の過ちを認めたり、質問したり、意見を言っても、馬鹿にされたり怒られたりしないと確信できている状態を指します。グーグルが膨大な時間とコストを掛けて自社での成功しているチームの条件因子を特定したところ、最も相関関係が高かったのが「心理的安全性」であったことで一躍、注目・有名になりました。もともとは経営学者のエイミー・エドモンドソンが1999年に著した論文で発表されたキーワードです。

「心理的安全性」の重要性は、特に昨今、働くメンバーたちが創造性や主体性を発揮できることがチームの成功に大きく関係するようになっていることと相関しています。しかし、一般的には組織というものはそれを阻害するような圧力がかかったり、個々人が無意識的にも自己抑制してしまったりというようなことがよく起きるのです。

 

「心理的安全性」の生みの親であるエドモンドソンは、次の4つの不安がメンバーたちの自由な発言を妨げると言います。

 

1)「無知な人物」だと思われる不安:「こんなことも知らないの?」と言われたくない
2)「無能な人物」だと思われる不安:「こんなこともできないの?」と言われたくない
3)「否定的な人物」だと思われる不安:反対意見を言って、同僚や上司に「反抗的だ」「自分たちの仲間ではない」と思われたくない
4)「邪魔な人物」だと思われる不安:場をかき回したり、和を乱すような人物だと思われたくない

 

人は職場で、このような不安を常に抱えており、素の自分をさらけ出すべきではないと考え、行動していることが多くあります。しかし、この思考と行動こそが実はチームの生産性を落としているのです。

 

「心理的安全性」のある場を作ろうとして勘違いする3つの落とし穴

このように、放っておくと働くチームのメンバーたちの心理的な抑圧をいかに解放するかが、上司の皆さんの役目であり腕の見せ所なわけですが、そうしますとそこで新たなアプローチの間違いに直面してしまうのです。

 

上司の皆さんが「心理的安全性」のある場を作ろうとして勘違いする、代表的な3つの落とし穴を挙げてみましょう。

 

1)場の空気を読みすぎる体質〜「気配りこそ命」という誤解
<心理的安全性には言い合える場が大事>ということで、上司の皆さんが気を遣いすぎると、メンバーの顔色を気にしすぎたり、メンバーの意見を忖度しすぎたり、メンバーと異なる自分の意見を言えなくなってしまったりします。
こうした状況を打破するには、意識を人間関係から、チームのテーマやミッション、ビジョンに向けること。上司から率先して、自分をさらけ出し、自然体で振る舞うことです。

 

2)決められない組織〜「全員一致すべき」という誤解
<一人ひとりの意見を大切に>しなければという意識が働きすぎると、特に優しすぎるリーダーや人間関係が希薄なチーム、あるいは生真面目すぎるチームでは、全員の意見を取り入れなければとか満場一致でないと決めてはいけないという誤解に走りがちです。
心理的安全性とは、決して全てを受け入れることでも全員一致を目指すものでもありません。お互いがしっかり自分の意見をぶつけ合い、対話し、その中からチームとしてのリスクテイクを前提とした<いずれかの意見>を採択し実行に動くことこそ心理的安全性が機能している組織です。ここで上司の皆さんのリーダーシップが問われます。

 

3)話し合い万能主義〜「話し合えば解決する」という誤解
対話や議論が大事であることは、上記まででも見たことです。しかし、<話し合えば全てが解決する。分かり合える>というものではありません。最後はリーダーが決議する。衆議独裁という言葉がありますが、上司はメンバーみんなの意見をしっかり聞き、その上でリーダーとしての役割・責務として結論を出す、決める。
これなくして、課題解決力の高いチームは機能しません。

 

チームにおいては<きつすぎる場>(=勝手に意見をぶつけ合うだけ。相手を批判し合うだけ)でも、<ぬるすぎる場>(=気を遣いすぎて、相手の意見を聞くだけ。自分の意見、本音を言えない)でも、心理的安全性は確保されないことを理解いただけたかと思います。

 

リーダーがしたい7つの行動、避けたい4つの思考、任用を避けたい5タイプ

心理的安全性のあるチームを作るには、どうすれば良いか。イメージしていただけたのではないかと思います。ではチームのリーダーである上司の皆さん自身は、どのような思考、行動を取れば良いのか。ご紹介しましょう。

 

まず、エドモンドソンは心理的安全性を壊す、リーダーの4つの思考を挙げています。

 

1)完璧主義:他者の全ての行動に完璧を求めたい
2)コントロール欲求:他者の思考や行動を自分の統制下に置きたい
3)過度の所属欲求:全員が全く同じ価値観や意見を持ち、一体感ある仲間でいたい
4)犯人探しの本能:トラブルに対して悪者を探し出して非難したい

 

どうでしょう?必ずしも4つ全てが悪意ある思考・行動ではなく、どちらかというと上司として良かれと思ってやっていることだったりします。しかし、これらの思考・行動の行き過ぎが心理的安全性を損ねることは、しっかり認識しておきたいですね。

 

そしてエドモンドソンが勧める、心理的安全性のためにリーダーができる7つの行動があります。

 

1)直接話のできる、親しみやすい人になる。
2)現在持っている知識の限界を認める。
3)自分もよく間違うことを積極的に示す。
4)参加を促す。
5)失敗は学習する機会であることを強調する。
6)具体的な言葉を使う。
7)ボーダーライン(フェアウエイゾーン、規範)を設け、その意味を伝える。

 

いかがですか? 上司は、構えず、対話を促し、未来に向かって創造、成長を目指し、大きな方向付けを行う人なのです。

 

参考までに、経営学の父・ドラッカーは、リーダーに任命してはいけない人物として、次の5つを挙げています。

 

1)人の強みよりも、弱みに目を向ける者
2)何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者
3)真摯さよりも頭の良さを重視する者
4)部下に自分の地位を脅かされると脅威を感じる者
5)自らの仕事に高い水準を設定しない者

 

まさにドラッカーは、50〜60年前に、心理的安全性を損ねる人材をリーダーにすることに警鐘を鳴らしていたのです。

 

*         *         *

 

心理的安全性のある場を作るも壊すも、場を司るリーダーである上司次第。あなたのさじ加減一つで、チームが活き活きと動き出すのです!

 

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この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。