TOP スペシャルコラムドラッカー再論 事業の意思決定に関する3つの手法。

2022/04/25

1/1ページ

スペシャルコラムドラッカー再論

第314回

事業の意思決定に関する3つの手法。

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >

 

 

前号、ドラッカーは事業のマネジメントにとって必要なものは、経済が景気循環のいかなる段階にあるかを考える必要なしに、決定を行えるようにしてくれる手法
— 循環して起こる経済変動に関わりなく、3年以上あるいは7年以上にわたって計画し発展していくことを可能にしてくれる手法が必要だと述べた。
そしてそのような手法が3つあると言う。

 

「第一の手法は、循環のいかなる段階にあるかを考えることなく、単に経済は常に変動するものであると仮定することである。」(『現代の経営』、1954年)

 

過去の経験から想定される最も急激かつ最悪の状況を想定することによって、意思決定そのものを景気循環に関わる推測から解放する。最悪のリスクに照準を合わせることによって、必要最小限の利益を知ろうというものだ。

 

「第二の手法は、使い方は難しいが、より効果的である。それは、すでに起こってはいるが、経済への影響がまだ現れていない事象に基づいて意思決定を行うことである。」(『現代の経営』)

 

この手法では、将来について予測する代わりに、過去の事象、しかし経済的には影響の現れていない事象に焦点を合わせる。つまり、経済情勢について推測する代わりに、経済の底流となる事象を発見しようということだ。
例えば最も分かり易いのが、人口構造の変化だろう。現在の人口構成から、10年後、20年後にどのような人口のボリューム、世代構成となるかは予測可能だ。日本において、高齢世代の比率の更なる上昇、生産労働力人口の減少、少子化は「既に確定された近未来」である。

 

だが、このことが分かったからと言って、それ単独ですべてが予見可能ということではない。高齢化社会が都市部への集中を引き起こすのか、あるいは逆に地方分散を引き起こすのか、分からない。少子化は進学塾マーケットの苦境を予見していたが、足元で起きているのは子供の人数の減少にも関わらず中学進学での受験者数の増加だ。

 

「底流分析を単独で使うことはできない。それは、第三の手法、すなわち予測に伴うリスクを小さくするための手法によって補わなければならない。」(『現代の経営』)

 

このためによく使われるのが、趨勢分析だ。底流分析が将来の事象についてなぜ起こるのかを考えるのに対して、趨勢分析はどの程度確実にいつ起こるのかを考える。
趨勢分析は、例えば一世帯当たりの電力消費量や年収当たりの生命保険料のような経済活動は急激に、あるいは突然に変わることはなく、長期的な趨勢を持つという前提に立つ。こうした経済活動、経済現象的な趨勢は、短期的な出来事や景気循環的な変動で乱され...

こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。