2022/03/31
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とことん観察マーケティング
第67回
ブックオフ創業者坂本孝さん、ご冥福をお祈り申し上げます
- マーケティング
- 有限会社オフィスフレンジー 代表 野林 徳行氏
野林徳行です。「KEIEISHA TERRACE」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいております。
67回目のコラムです。『カスタマーを知る』ことの大切さを毎回書かせていただいています。多くの企業では、『カスタマーを知る』ことが大事と言いながら、足元の数字を優先してしまいがちです。足元はもちろん大事ですが、カスタマーを知ることで既存事業のPDCAは回りやすくなり、新規事業の立ち上がりは早くなります。または修正が小さくなります。
今回は、先般ご逝去されたブックオフの創業者坂本孝さんに触れていきたいと思います。
ブックオフの創業者 坂本孝さん
「ブックオフ」「俺の株式会社」創業者の坂本孝氏が亡くなりました。81歳でした。50代で「キレイな古本屋」を創業。お家騒動でブックオフを出た後、70代で立ち食いの高級イタリアン・フレンチレストランを創業しました。かつての古本屋は、すべての値決めを主人だけのナレッジで行い、立ち読みをさせず、ほこりっぽい店舗で発展性もなく継続している、どちらかというと暗いイメージの業態でした。それを、入社したばかりのアルバイトでも査定できて、明るく元気に接客して、新刊書店のようにきれいで、立ち読みOKのブックオフを創りました。その結果、フランチャイズ展開も容易になり、一時は1000店舗になるまでの成長を遂げました。まさに逆転の発想です。
そして、内部告発からブックオフを追い出されてしまうのですが、そこからの一念発起の起業が、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」です。高級フレンチは、少しずつの料理が大きな皿でエレガントに運ばれてきて、19:00に入店したら22:00くらいまでゆっくり食事をし、席はその日1回転というシステムですが、坂本さんにはどうも性に合わなかったようです。それなら立ち食いにして、一日4回転できるのではないか。そのかわり、とんでもなくステキな料理を原価度外視で提供する。そのために有名シェフを引き抜いて、大きな写真とともに店外に掲出する。たっぷりのフォアグラが1200円などの驚きとともに提供しました。店舗によってはジャズライブなどの演奏を設けたりしました。案の定、16:00には行列ができ、高級料理とともに、ごくごくとワインを何本か飲んで帰っていくグループ。想定通りの展開となりました。これも逆転の発想です。
坂本さんは、天才的にビジネスを発想し、人間力で強く推進していくタイプです。この2例をよく考えてみると、自分が思ったこと=カスタマーが「負」と考えることをステキに転換していく発想です。つまり、カスタマーは「なぜ幸せになるのか」という起点からいつも始まっていたのです。
坂本経営に参加しました
リクルート在籍時に、半年だけブックオフに研修で出向し、坂本さんのカバン持ちをしたことがあります。当時リクルートでは、「アントレ」とい...
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