TOP スペシャルコラムドラッカー再論 事業の目標において、「唯一の正しい目標」を追い求めることは間違いである。

2022/02/07

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スペシャルコラムドラッカー再論

第303回

事業の目標において、「唯一の正しい目標」を追い求めることは間違いである。

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  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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「今日、目標管理すなわち目標によるマネジメントについての議論のほとんどが、「唯一の正しい目標」を探求するものである。しかしそれは、賢者の石を探し求めるように空しいだけではない。明らかに毒をなし、誤って人を導く。」(『現代の経営』、1954年)

 

例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。今日の利益のために明日を犠牲にする。いま売りやすい製品に力を入れ、明日のための製品をないがしろにする。
研究開発、販売促進、設備投資をめまぐるしく変える。そして何よりも資本収益率の足を引っ張る投資を避ける。これによって設備は危険なほどに老朽化する。言い換えるならば、最も稚拙なマネジメントを行うよう仕向けられる。

 

「マネジメントとは、事業上の多様なニーズと目標をバランスさせることである。そのためには判断が必要である。一つの目標だけを探求することは、つまるところ、この判断を不要にするために魔法の公式を求めることである。判断の代わりに公式を使うことは、常に間違いである。」(『現代の経営』)

 

私たちがなしうることは、焦点を絞り、事実を集め、意思決定と活動の有効性についての尺度を用意することによって判断を可能にすることだ。そのためには企業の本質からして、一つの目標だけでなく複数の目標が必要である。

 

「それでは、それらの目標とは何か。答えは明らかである。事業の目標は、事業の存続と繁栄に直接かつ重大な影響を与えるすべての領域において必要である。すべての領域とは、マネジメントの意思決定の対象として考慮に入れるべきすべての領域である。」(『現代の経営』)

 

それらの領域における目標が事業の内容を具体的に規定する。事業が目指すべき成果と、その実現に必要な手段を教える。
ここに言う目標とは、次の5つのことを可能となるものでなければならないとドラッカーは言う。

 

(1)なすべきことを明らかにする
(2)なすべきことをなしたか否かを明らかにする
(3)いかになすべきかを明らかにする
(4)諸々の意思決定の妥当性を明らかにする
(5)活動の改善の方法を明らかにする

 

「利益の最大化という昔ながらの目標は、これら5つのことのすべてはおろか、そのいずれも満たすことができない。ゆえに目標として失格である。」(『現代の経営』)

 

事業の存続と繁栄に直接重大な影響を与えるすべての領域において、目標が必要だとドラッカーは指摘する。
その目標を設定すべき領域は、ドラッカーによれば次の8つだ ——...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。