2022/01/24
1/1ページ
スペシャルコラムドラッカー再論
第301回
われわれの顧客は誰か。
- マーケティング
- イノベーション
- マネジメント
- エグゼクティブ
- 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸
「われわれの事業は何か」を知るための第一歩はなんだろう?
それは、「顧客は誰か」を問うことだとドラッカーは言う。
「<現実の顧客は誰か><潜在的な顧客は誰か><顧客はどこにいるか><顧客はいかに買うか><顧客はいかに到達するか>を問うことである。」(『現代の経営』、1954年)
つい先日、外資系企業複数社と日系企業複数社を経験してこられている某CMOの方とお話ししている中で、外資に比べて日系企業がいかにプロダクトアウトで顧客をみていないかという話になった。
それでもこれまでは、顧客を見る機能を流通・小売が肩代わりしてくれていたかもしれないが、今やその流通・小売自体が顧客を見て開発した自社PBで競合にもなっている。
さらには自社EC、D2Cの進展なども鑑みれば、メーカーであっても「顧客は誰か」を真摯に問わないわけにはいかない。
「次の問いは、<顧客は何を買うか>である。GMのキャデラック事業部の人間ならば、自分たちの事業はキャデラックを生産し販売することであると考える。しかし、4000ドル(*現在でいえば6万〜16万ドルくらいか?)のキャデラックを買うものは、交通手段を買っているのか、それとも富のシンボルを買っているのか。」(『現代の経営』)
要は、当時のキャデラックや現在のポルシェやフェラーリは、同じ自動車メーカーと競争しているのか、それともバーゼルの高級時計や国内外の別荘地と競争しているのかということだ。
ジムに通う人も、キングジムに通う人はボディビルばりのトレーニングが目的だが、カーブスに通う女性たちは健康をイメージしながらもコミュニティを求めている。
いま、私たちの周囲は「同じ製品・サービスを、志向ごとに全く異なる目的や用途で購入している」ものばかりで溢れている。
「最後に、<顧客は何を価値あるものとするか><製品を買うとき何を求めているか>という最も難しい問いがある。」(『現代の経営』)
ドラッカーはこれに対して、これまでの経済理論は、この問いに対して「価格」の一語で答えるが、この答えは大きな誤解を与えると指摘する。
「確かに価格が重要な要素の一つでない製品はほとんどない。しかし、まず第一に、価値としての価格そのものが単純なコンセプトではない。」(『現代の経営』)
例えばランニングコストが安いがイニシャルが高額なサービスよりも、ランニングコストは高いがイニシャルが無料のものの方が選択されたり、単位あたり価格の安いお徳用ボトルよりも単価は上がるミニボトルを私たちは往々にして選択することがある。
&n...
こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。