2021/12/27
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スペシャルコラムドラッカー再論
第298回
生産性を正しく計測するための、ドラッカーが指摘する4つの要因。
- マーケティング
- イノベーション
- マネジメント
- エグゼクティブ
- 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸
ドラッカーは生産性について、会計用語が人を誤らせる原因となっていると指摘している。
「会計士が間接費と呼ぶ多分に非難の意味合いを持つ用語がひとまとめにしているものは、経営管理者、企画担当者、設計者、イノベーションの担い手など、最も生産的な人的資源に関わるコストを含んでいる。」(『現代の経営』、1954年)
確かにだ。これらを十把一絡げにして「間接人件費」としてコストとみなし、例えば単純な額の圧縮を行うような経営は、短期的な利益出しにはなっても、中期的には逆にジリ貧経営に陥るだろう。
そして同時に、ドラッカーはこうも指摘している。
「と同時にそれは、組織構造の間違い、士気の劣悪さ、目標の混乱、すなわちマネジメントの失敗に起因する人たち、破壊的とまではいかなくとも純粋に寄生的な高給取りを含んでいる。その典型が、組織構造の間違いの兆候として常に出現する調整役なるポストである。」(『現代の経営』)
間接費には2種類あるとドラッカーは言う。
一つは生産的な間接費。肉体労働や設備に関わるコストを代替するものとしての、経営管理者や専門職にまつわるコストだ。
もう一つは、非生産的な間接費。組織内の摩擦によって発生し、かつ自ら摩擦を発生させ、生産性に何ら寄与せず、むしろ生産性を阻害する人たちに関わるコストである。
これらを計測するには、業績(そのための産出)をもたらす全ての活動を包括する生産性のコンセプトが必要となる。
つまりは、会計学で定義されている活動に限定してしまうと、目に見えないコストの計測がすっぽりと抜け落ちてしまうことになるのだ。
ドラッカーは、生産性に対して重大な影響を及ぼす、目に見えない要因は主に4つあると言う。
「第一に、時間である。(中略)人にせよ機械にせよ、時間を継続して利用できる場合は、生産性は高い。」(『現代の経営』)
逆に空間的な余裕のない工場でや老朽化した機会を使っての三交代制などの仕事を過密化させる行為ほど非生産的なことはない。
「第二に、同じ資源を使っても製品の組み合わせを変えると生産性に違いが出る。」(『現代の経営』)
同じ原材料と技術を使い、同じ直接労働者と間接労働者を使って同じ量の生産を行いながら、一方は巨万の富を築き一方は破産するのも、この製品ミックスの違いによる。
「第三に、プロセス・ミックスなるものがある。部品の内製と外注との違い、組み立ての内部化と外部委託との違い、自社ブランドにして自社販売網で売ることと、卸売業者のブランドを付けて売って...
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