TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「顧客創造戦略」となる4つの戦略。

2021/09/20

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スペシャルコラムドラッカー再論

第284回

「顧客創造戦略」となる4つの戦略。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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これまでご紹介してきた企業家戦略は、いずれもイノベーションの導入の仕方が戦略であった。ここからご紹介する戦略は、イノベーション自体が戦略となるものだ。

 

製本やサービスは既に存在しているものでよい。これを新しい何かに変える。物理的にはいかなる変化を起こさなくてもよく、効用や価値、経済的な特性を変化させるのだとドラッカーは説明する。

 

「それらの企業家戦略には一つの共通項がある。いずれも顧客を創造する。顧客の創造こそ常に事業が目的とするものである。さらには、あらゆる経済活動が究極の目的とするものである。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

この顧客創造戦略には、効用戦略、価格戦略、事情戦略、価値戦略の4つがあるとドラッカーは言う。

 

効用戦略の例としてドラッカーは、1873年にイギリスでローランド・ヒルによって「発明」された郵便制度を挙げている。
郵便制度自体は古くローマの時代から存在しており、それまでの郵便料金は受取人払いで距離と重さで計算されていた。ヒルはこれを、距離に関わりなく一律とし、前払いにし印紙を貼らせた。一夜にして郵便は簡単、便利なものとなった。所定の印紙を貼って投函すればよく、値段も安くなった。

 

「重要なことは郵便が便利になり誰でも利用できるようになったことだった。(中略)効用戦略では価格はほとんど関係ない。顧客が目的を達成するうえで必要なサービスを提供する。顧客にとって「真のサービスは何か」「真の効用は何か」を追求する。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

価格戦略の例としては、ドラッカーはジレットの「替え刃モデル」とゼロックス(創業時のハロイド社)のコピー機+コピー用紙の販売モデルを挙げている。
読者経営者の皆さんには、この2つはよくご存じの「何で設けるのか」の代表例だろう。剃刀の本体ではなくかみそりの刃を、コピー機ではなくコピー用紙を、顧客が使いたい(消耗したい)ものを安く大量に提供するモデルこそイノベーションだとドラッカーは言う。

 

「供給者のほとんどが戦略として価格設定をとらえようとしない。価格設定のし方によって、顧客は、供給者が生産するものではなく自分たちが買うもの、すなわち一回のひげそり、一枚のコピーに対価を払うようになる。総額として払う額はさして変わらない。支払いの方法を消費者のニーズと事情に合わせればよい。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

なんのことはない、消費者が実際に買うものに合わせるだけのことだ。供給者にとってのコストではなく、顧客にとっての価値に対して価格を設定する。こ...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。