TOP スペシャルコラムドラッカー再論 3つのニッチ戦略。その中の「関所戦略」。

2021/08/30

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第281回

3つのニッチ戦略。その中の「関所戦略」。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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ここまで見てきた総力戦略、創造的模倣戦略、柔道戦略の3つの企業家戦略は、市場や業界の支配までは狙わなくとも、トップの地位は目指す。
これに対して、ここから見ていくニッチ戦略は、目標を限定する。

 

「すでに述べた3つの戦略が、大きな市場や業界で支配的な地位を占めようとするのに対し、ニッチ戦略は限定された領域で実質的な独占を目指す。先の3つの戦略が競争を覚悟しているのに対し、ニッチ戦略は競争に免疫になることを目指し挑戦を受けることさえないようにする。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

総力戦略、創造的模倣戦略、柔道戦略に成功すれば、大企業となり、御社が普通名詞になるとまでは言い切らずとも、相当目立つ存在となる。
一方でニッチ戦略は、これに成功しても世に大きく名をあげることはなく、実を取るだけだ。それらの企業は目立つことなく優雅に暮らす。
どちらが幸せかは、まさに読者経営者諸氏のそれぞれの志向、好みによるだろう。

 

「この戦略のポイントは、製品としては決定的に重要でありながらほとんど目立たず誰も競争しにこない点にある。ニッチ戦略には3つあり、それぞれに特有の条件、限界、リスクがある。関所戦略、専門技術戦略、専門市場戦略である。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

3つのニッチ戦略、まず一つ目の「関所戦略」とは、その名の通り、関所となり得る<必要不可欠な製品・サービス>の存在から成り立つ。
これがないとそもそもその事業、製品・サービスが成り立たないというパーツを自社が占有できているか。また、ドラッカーがここで言うのは、市場の適度な「小ささ」だ。大手企業などがあえて参入してこようと思わないニッチさこそが、関所を成り立たせるところなのだと。

 

「市場の規模は、最初にその場を占めた者一人だけが占有できる大きさでなければならない。一社だけが占拠でき、しかもあまりに小さく目立たないために、競争相手が現れようのない、まさに生態学的なニッチでなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

このような関所は通常、何らかのギャップから発見される。そしてひとたび適所を占めてしまえば、それ以上に大きな成長は見込めない。
関所の地位を占めた企業が勝手に事業を拡大したり変えたりすることはできない。いかに優れ、いかに安くとも、需要はその製品が組み込まれているプロセスや製品への受容によって規定される。
更には、関所化したものを代替するほかの方法が発見されれば、一気に需要の減退が起こるので要注意だ。

 

「関所戦略をとったものは、その独占を濫用することはでき...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。