TOP 社長を目指す方程式 “ブレない”リーダーは危険?周囲を納得させる最強の決断方法

2021/08/17

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社長を目指す方程式

第72回

“ブレない”リーダーは危険?周囲を納得させる最強の決断方法

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  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上 和幸

 

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今回の社長を目指す法則・方程式:橋下徹「手続的正義による決断力」

 

先を見通しにくい時代、コロナで一変した世界。足元では、日本でもようやくワクチン接種が進み始め、感染が落ち着くのかと思いきや、8月に入って過去最大の爆発的感染拡大が続いています。なんとも読みにくい環境、正解が分からない中で意志決定する必要がある瞬間が、上司の皆さんにも非常に多くなっていますね。このような状況下で、どのように決断すればよいのか、自分の意思決定が部下に説得力を持つのか気になる方も多いことと思います。

橋下徹さんの新刊『決断力』は、「先が見えない中でも最前手を打つ」「誰もが納得する結論の導き方」と銘打たれています。今回はこちらの書籍から学んでみましょう。

「実体的正義」と「手続的正義」

「2020年から感染が拡大した新型コロナウイルスの混乱の中では、先の見えない状況に恐れをなして意思決定を先延ばしにし、後手後手の対応を迫られるトップの事例が数多く見られました。その理由は、皆「絶対的な正解」を探そうとしているから。「これが正解」という100%の確信が持てるまで情報を集めてから、決めようとする。しかし、この手法が通用するのは、「ある程度、正解のわかる」問題だけです。多くのリーダーが決断しなければならないのは、「正解がまったくわからない」問題です。」(『決断力』より)

 

まったくその通りですね。この1年半、国や行政のコロナに関連する対応を見ていて、「なんで決められないのだろう」「どういう根拠で決めているのだろう」と思うことが続き、ジリジリとした感情を抱えている人は少なくないと思われます。

 

弁護士でもある橋下さんは、司法の世界で正義の考え方に「実体的正義」「手続的正義」の二つがあることを紹介し、いまのような時期・状況においては、絶対的な正しさを問う「実体的正義」ではなく、結果に至る過程・プロセスの正当性があるならばそれを正しい結果とみなす「手続的正義」を選択すべきと言います。

 

おっしゃる通り、国政や都政・市政もそうですし、企業における意思決定も、常に絶対的な正義・正解がある訳ではありません。その際に、どちらが正しいのかばかりを論駁(ろんばく)していても埒があきませんよね。私たち企業人でも、納得できる意思決定・決断とは、「どのように決めたのか」について納得性のあるものです。

 

「手続的正義」による決断プロセス

では、どうすれば「手続的正義」を導き出す意思決定ができるのか。橋下さんは、次の3ステップで判断、決断することだと紹介しています。

 

①立場、意見が異なる人に主張の機会を与える

②期限を決める

③判断権者はいずれの主張の当事者にも加わらない

 

いつまでに決めるかの期限を明確にし、その間さまざまな対立意見をしっかり出させる。侃侃諤諤(かんかんがくがく)やる中で、リーダーはそれぞれの主張にしっかり耳を傾け、最終的な決断を下す。「衆議独裁」という言葉がありますが、みんなで議論し、最後はトップが一人で決める。これが大事です。

 

橋下さんは、議論においてはさまざまな意見を持つ人を集めることと、オープンな場で議論することを主張しています。これも非常に重要なポイントです。個別に議論したりすると、結局どこかで情報がねじ曲がったりして最終的なコンセンサスを得られなかったり、陰口が蔓延(まんえん)したりします。

もう一つ、橋下さんが大阪府知事時代に徹底していたことは、「決めたことには従ってもらう」ことを必ず約束してもらうことだったそうです。あなたの会社にも、いませんか? 決定されたことに対して「俺は反対だった」と言っている人。中間管理職にはこの手の人が結構いたりしますが、その時点でリーダー失格だと思います。

 

「ブレない」リーダーよりも「修正できる」リーダー

リーダーの仕事は決めたら終わるかといえば、そうは行きません。決めたことの周知、そして実行。実行してそのままうまくいけば良いですが、必ずしもそうもいかないのもまた、リーダーのしんどいところです。

ときには実行してみて、決めた内容が望ましくなかったり、途中で間違っていることが分かったりすることがあります。そのとき、一度決めたことだからと何が何でもそのまま進めることが正しいのでしょうか?

 

橋下さんは、強いリーダーは「ブレない」人ではなく、みんなを「納得させられる」人だと強調しています。

 

「リーダーのあり方として、世間では『ブレてはいけない』とよく言われます。周囲を引っ張るリーダーは、最初から絶対的に正しい方針を示すのがよいと思われているのでしょう。これは実体的正義の考え方です。しかし僕は、判断を間違えたらすぐに修正します。『朝令暮改でも構わない』と思っています」(『決断力』より)

 

ここで大事なことは、修正する場合も適切なプロセスを踏んで修正のための判断をすることです。

自分の意見や主張にこだわりすぎるリーダーのほうが見誤る可能性は高いです。特にいまのような不透明で、状況変化がコロコロ起きるときには、自分の主張にこだわる「ブレない」リーダーよりも、もし間違いがあったら「すぐに認めて修正する」リーダーのほうが、信頼できるし、結果としてよい成果を残すでしょう。

 

“自分の言葉”で語れるリーダーになるには

周囲の意見を聞き、理解し、その上で判断し、それを堂々と自分の言葉で語るリーダーには説得力があります。「自分の言葉で語る」も非常に重要なポイントなのです。

 

橋下さんは本書の中で、ご自身の周囲の良い事例・悪い事例を紹介しながら、自分の言葉で語れるリーダーはなぜペーパーやプロンプターを棒読みせずに自分の言葉で語れるのかについて、さまざまな立場の意見を、手続的正義に基づく適切なプロセスの中でしっかりと聞いているからだと述べています。

なので、自分の考えへの賛成派、反対派の議論、それぞれの主張を十分に知っており、それに対する自分なりの回答を持っている。だから何を聞かれても、ペーパーに頼る必要なく、堂々と自分の言葉で答えることができ、説得力があるのです。

 

皆さんもそうですよね。様々な情報・意見を吸収し、自分がしっかり考えつくしたことについては、明快に話すことができ、上司も部下もあなたの話に納得するはずです。

 

リーダーにはトラブルはつきもの。自分自身が発端となることだけでなく、管轄している組織において思いもよらない事態が発生する可能性があるのは政界・行政も、私たち民間企業も一緒です。

橋下さんは、危機管理の対応7原則として次のプロセスを紹介しています。

 

1)事実関係がわかるまでは断言しない

2)都合の悪い情報ほど全て公開する

3)情報をすべて公開し、主張すべきところは主張し、謝るべきところは徹底して謝る

4)解明のための調査や議論を全てオープンにする

5)実体的正義で違法・不正を判断するのでなく、手続的正義に基づきトラブルの事象を判断する

6)疑われるものがあったら素直に謝罪、反省する

7)謝罪後、信頼回復のための事後の挽回行為に全力を尽くす

(『決断力』より)

 

万が一のときのリーダーとしての対応方法として、頭に入れておきたいですね。

 

*         *         *

 

正解が分からないときに、人は決断から逃げる、先送りする生き物です。だからこそ、トップを目指す上司の皆さんは、手続的正義による決断でリーダーとしての信頼とチャンスを掴み取りましょう。

 

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この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。