TOP スペシャルコラムドラッカー再論 創造的模倣戦略の勝ち筋を抑えよ。

2021/08/10

1/1ページ

第279回

創造的模倣戦略の勝ち筋を抑えよ。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >

 

 

企業家は、すでに誰かが行ったことを行う。だが、最初にイノベーションを行った者よりもそのイノベーションの意味をより深く理解するがゆえに、より想像的となる——。
これは1985年のドラッカーの言葉だが、我々はこの主張からすぐに想起するイノベーターとしてスティーブ・ジョブズの名前を挙げるだろう。iPodもiPhoneもiPadも、プロダクトのコンセプトも使われている技術も、いずれもアップルがイノベーションを起こしたものではなく、既に存在していたものだった。ただし、その商品が提供すべき世界観について最も熟知していたのがジョブズだった。

 

「この戦略を最も多く使い、大きな成果をあげてきたのがIBMである。同じくP&Gも、石鹸、洗剤、トイレタリーの市場でトップの地位を獲得し維持するために使っていた。世界の時計市場においてトップの地位を得た日本のセイコーもこの戦略を使った。(中略)誰かが新しいものを完成間近までつくりあげるのを待ち、そこで仕事にかかる。短期間で、顧客が望み、満足し、代価を払ってくれるものに仕上げる。直ちに標準となり市場を奪う。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

これを創造的模倣戦略と呼ぶ。創造的模倣戦略は、先に見た総力戦略と同じく、市場でのトップの地位を目指す。しかしリスクははるかに小さい。
創造的模倣を行うプレイヤーが動き出す頃には、市場は既に確立され、製品は市場に受け入れられている。それどころか、最初のベンチャーが供給できる以上の需要が生まれていることが多い。

 

「最初のベンチャーが直面した無数の不確定要素も、ほとんどが明らかにされているか、少なくとも分析し調べることができるようになっている。もはやパソコンやクォーツ時計が何であるか、何をするものなのかを説明する必要はない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ドラッカー曰く、最初にイノベーションを行った者が全てのことを行い、市場を独占することはそれほど多くない。これは読者経営者の皆さんがご自身の関わっている業界を見渡しても、確かにそうではないだろうか。

 

「創造的模倣戦略は他社の成功を利用する。それは一般に理解されているような意味でのイノベーションではない。製品やサービスを発明しない。すなわち製品やサービスを完成させその位置づけを行う。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

大概の場合、新しい製品やサービスは市場に導入されたままの形では、何かが欠けている。機能や特性を追加する必要があるかもしれないし、少しずつ異なる市場に対してカスタマイズが必要かもしれない。あるいは...

こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。