TOP スペシャルコラムドラッカー再論 総力戦略の仕掛けどき、要諦、そして認識しておくべき大きなリスク。

2021/08/02

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第278回

総力戦略の仕掛けどき、要諦、そして認識しておくべき大きなリスク。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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総力戦略の要諦は、ドラッカーの説くところによれば、最初が肝心。というか、最初で全てが決まるというところにある。

 

「新しい理論は、昔ながらのパラダイムがまったく無効となるまでは見向きもされない。その間は、新しい理論を受け入れ利用する者がその分野を独り占めすることになる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

もちろんこの戦略は、イノベーションの機会についての綿密な分析があって初めて成功する。そして全エネルギーの集中を必要とする。

 

「この戦略では明確な目標を一つ掲げてそこに全エネルギーを集中しなければならない。しかも成果が出始めるやさらに大量に資源を投入しなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

イノベーションが事業として成功した後に、本当の仕事が始まるのだとドラッカーは述懐する。
トップの地位を維持していくための継続的な努力が必要であり、さもなくば競争相手に市場を奪われる。

 

「リーダーシップを握った以上、これまでよりも速く走り、イノベーションの努力をさらに大規模に続けなければならない。開発費もイノベーションに成功した後でこそ増額しなければならない。新しい製品の利用法を開発し、新しい顧客を発掘し、新しい製品を試してもらわなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

何にもまして、この戦略によって成功した企業家は、競争相手に先んじて自らの手で製品やプロセスを陳腐化させていかなければならないのだ。

 

「次世代の製品やプロセスを開発するために、最初の成功をもたらしたと同じだけの努力と資源を投入しなければならない。さらには価格を計画的に下げなければならない。高価格を維持することは競争相手に傘をさしかけ、やる気を起こさせるだけである。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

この戦略には、チャンスは一度しかない。直ちに成功するか、さもなければ完全な失敗に終わるとドラッカーは指摘する。

 

「まずまずの成功や惜しい失敗などない。成功と失敗しかない。成功でさえあとからしかわからない。少なくともわれわれは、多くの成功例が失敗していた可能性のあることを知っている。運や偶然によって救われたにすぎない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

改めてだが、総力戦略はリスクが大きい。他の戦略が取られるのは、この戦略では成功よりも失敗のリスクのほうが大きいからだ。
強い意志がなければ失敗する。努力が充分でなければ失敗する。イノベーションとしては成功しても、充分な資源を投入しなければ失...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。