TOP スペシャルコラムドラッカー再論 企業家戦略には4つある。

2021/07/26

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第277回

企業家戦略には4つある。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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企業家精神を発揮するには、企業家マネジメントすなわち組織の内部に関わる幾つかの原理と方法が必要である。更に、組織の外部、すなわち市場に関わる幾つかの原理と方法が必要である。それが企業家戦略であると、ドラッカーはまとめる。

 

「最近、経営戦略が流行し文献も多く出ているが、企業家戦略について論じたものは見たことがない。しかし企業家戦略こそ重要である。しかもそれはユニークであり、他の経営戦略とは性質を異にする。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

企業家戦略には4つあるとドラッカーは言う。
総力戦略、ゲリラ戦略、ニッチ戦略、顧客創造戦略だ。これら4つの戦略はいずれかひとつを選べということではない。そのうちの2つを組み合わせ、時には3つを組み合わせてひとつの戦略とすることができる。また、はっきりと区別できるものではないともドラッカーは言う。同じ戦略をゲリラ戦略あるいはニッチ戦略としてとらえることもできることがある。

 

「しかしこれら4つの戦略には、それぞれ特徴がある。合致するイノベーションと合致しないイノベーションがある。それぞれが企業家に対し明確な行動を要求し、それぞれに限界をもちリスクをもつ。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

企業家がまず、市場でのトップを狙う際に取る戦略が「総力戦略」だ。
総力による攻撃は、最高の企業家戦略とされている。この戦略だけが企業家戦略であるというような考えも、特にテクノロジー系企業の企業家を中心に多くある。だが、そのような考えは間違いだとドラッカーは指摘する。

 

「確かに多くの企業かがこの戦略を取る。だが、この戦略はリスクが最も低いわけではないし、成功の確率が最も高いわけでもない。企業家として優れているわけでもない。それどころか4つの企業家戦略の中で最もギャンブル性が高い。いっさいの失敗を許さずチャンスが二度ない辛い戦略である。ただし成功すれば成果は大きい。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ドラッカーは「総力戦略」で成功した例として、ビタミン、サルファ剤、トランキライザーで3回総力戦で市場を支配したスイスのホフマン・ラロッシュ社、ナイロンで成功したデュポン、PCで成功したアップル(アップル・コンピュータ)を挙げている。

 

この戦略は必ず命中させなければならない。さもなければ失敗する。

 

「月を狙うのに似ている。わずかに狂うだけでロケットは宇宙のかなたに消え去る。ひとたび発射してしまえば修正や調整はきかない。したがってこの戦略には徹底した思考と分析が不可欠である。小説や映画に出てくるよ...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。