TOP スペシャルコラムドラッカー再論 急成長ベンチャーに欠かせない、資金マネジメントとマネジメント・システムの先取り計画。

2021/07/05

1/1ページ

第274回

急成長ベンチャーに欠かせない、資金マネジメントとマネジメント・システムの先取り計画。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >

 

 

「ベンチャーは成長するに伴い、オーナー自身や家族、あるいは友人という私的な資本では間に合わなくなる。株式公開、既存企業との提携、保険会社や年金基金からの資金調達など大きな資金源をもたなければならなくなる。増資によって資金を調達してきたのであれば長期の借り入れを行わなければならなくなる。もちろん逆の場合もある。成長によってそれまでの資本構造が陳腐化し障害となる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

ドラッカーは、資金計画が比較的容易なベンチャーとして、レストランチェーン業態、病院チェーン、専門店チェーンなど、各地で類似の事業を展開してくものを挙げている。各事業体(エリアごとの店舗)がそれぞれ独自に資金繰りをすることができるからだ。FC制の導入や地域単位での事業パートナー制などを導入しやすい。

 

「このようにすれば、成長と拡大に必要な資金を段階的に調達していくことができる。一つひとつの事業が成功すれば、それが次の事業に対する投資家への保証と誘因になっていく。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ただし、この方法が機能するには三つの原則があるとドラッカーは述べている。

 

(1)事業単位のそれぞれをできるだけ早く、遅くとも二、三年以内に採算に載せなければならない。
(2)素人のフランチャイジーや外科センターの所長など、マネジメント能力のあまりない人たちでも、本部からの指示なしに無事にマネジメントできるよう事業内容を定型化しておかなければならない。
(3)事業単位のそれぞれが、かなり早い時期に、追加資金を必要としなくなり、むしろ次の事業単位を資金的に助けられるようになれなければならない。

 

これらを踏まえて事業を計画、展開し、三年先を見越した最大の必要資金を想定して計画しておけば、必要な資金を必要な方法で調達することができる。

 

「ところが資金源や資金構造を超えて成長してしまったあとでは、自らの独立はもちろん、その生命まで危険にさらすことになる。うまくいっても、創業者はあらゆる企業家的なリスクを冒して懸命に働いた挙げ句、他の者を豊かなオーナーにしただけとなる。自らは雇われの身となり、新しくやってきた投資家がオーナーとなる。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

急成長が必ずしもそのベンチャーの未来を明るくするとは限らず、逆にそれが資金面から首を絞めることになるという事実をドラッカーはまざまざと描いている。
そして同時に、マネジメント・システム面でも同様の落とし穴がある。

 

「素晴らしい製品をもち、市場で素晴らしい地位を占め、...

こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。