TOP スペシャルコラムドラッカー再論 企業家精神にとってのタブーがある。

2021/06/14

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第271回

企業家精神にとってのタブーがある。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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既存の企業が企業家たるために、行ってはならないこと=タブーがあるとドラッカーは指摘する。

 

「最も重要なタブーは管理的な部門と企業家的な部門を一緒にすることである。企業家的な部門を既存の管理的な部門のもとに置いてはならない。既存の事業の運営、利用、最適化を担当している人たちにイノベーションを任せてはならない。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

これまで見てきた通り、既存事業のための原理や方法を変えることなくイノベーション部署に適用しても無理があり、失敗は必至だ。
大手企業がベンチャーとジョイントしてうまくいかないのは、ベンチャー側からは官僚的、形式的、保守的な大手のルールに息を詰まらせ、大手側はベンチャーが規律に欠け、粗野で夢想家に見えることから起きる。

 

大手企業内で新規事業開発が成功するときは、多くの場合、社内の気心知れた、勝手知ったる人材が新しい事業を手がけたときだとドラッカーは言う。それは互いに理解し合える人たち、信頼し合えるひとたち、仕事の進め方を知っている人たちでプロジェクトを進めたからだ。

 

「もちろん、企業全体に企業家精神が浸透していること、すなわち企業全体がイノベーションを望み、イノベーションに手を伸ばし、イノベーションを必然の機会として見ていることが前提である。組織全体が新しいものに貪欲になっていなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

いかなる組織であろうと、得意とする分野以外でイノベーションを行おうとしても成功することはない。イノベーションは多角化であってはならないのだ。
いかなる利点があるにせよ、多角化はイノベーションや企業家精神とは相容れない。理解していない分野で新しい試みを行うのは難しいからである。

 

「既存の企業がイノベーションを行うことができるのは、市場や技術について卓越した能力をもつ分野である。新しいものは必ず問題に直面する。そのとき、その事業に通暁していなければならない。多角化は市場や技術について既存の事業との共通性がない限り、うまくいかない。たとえ共通性があったとしても多角化はそれ自体に問題がある。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ドラッカーは、ベンチャーを買収することによって企業家的になろうとしてはならないとも断言している。

 

「このことは、特に企業家的でない企業が企業家的な企業を買収したときにいえる。買収されたベンチャー側のマネジメントは、新しく親会社となった企業の人たちとは一緒にやっていけないことを知る。その逆も起こる。私自身丸ごと買収がうまくいった...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。