2021/03/22
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第260回
イノベーションの5つの条件。
- イノベーション
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸
ドラッカーは、彼がイノベーションの7つの機会と呼んでいるものとは関係なく行われるイノベーションも存在することを認めている。
「目的意識、体系、分析と関係なく行われる。勘によるイノベーション、天才のひらめきによるイノベーションである。だが、そのようなイノベーションは再度行うことができない。教えることも学ぶこともできない。天才になる方法は教えられない。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)
更に悪いことに、これらのひらめきは何かに結実することなく、アイデアはアイデアのままに終わる。
結局のところ、イノベーションの方法として提示し論ずるに値するのは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけなのだ。
「成功したもののうち90%はそのようなイノベーションである。目的意識をもち、体系を基礎として、かつそれを完全に身につけて、初めてイノベーションは成功する。」(『イノベーションと企業家精神』)
それではイノベーションの原理とは何だろう?イノベーションに必要な「なすべきこと」「なすべきでないこと」は何だろう?
ドラッカーは、イノベーションの5つの条件を紹介する。
第一に、イノベーションを行うには機会を分析することから始めなければならない。イノベーションのための7つの機会を徹底的に分析しなければならない。
「もちろんイノベーションの分野が異なれば、機会の種類も異なる。時代が変われば機会の重要度も変わっていく。7つの機会の全てを分析することが必要である。油断なく気を配るだけでは十分でない。分析は常に体系的に行わなければならない。機会を体系的に探さなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)
第二に、イノベーションとは理論的な分析であるとともに知覚的な認識である。
「イノベーションを行うにあたっては、外に出て、見て、問い、聞かなければならない。このことは、いかに強調してもしすぎることがない。」(『イノベーションと企業家精神』)
イノベーションに成功する者は、右脳と左脳の両方を使う。数字を見るとともに人を見る。機会を捉えるにはいかなるイノベーションが必要かを分析をもって知る。その後に、外に出て、顧客や利用者を見て、彼らの期待、価値、ニーズを知覚をもって知る。
イノベーションに対する社会の受容度も知覚によって知る。顧客にとっての価値も同様だ。
「自らのアプローチの仕方がやがてそれを使うことになる人たちがそこに利益を見出すようになるには何を考えなければならないかとの問いを発す...
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