TOP スペシャルコラムドラッカー再論 アイデアによるイノベーションが最も危険な理由。

2021/03/15

1/1ページ

第259回

アイデアによるイノベーションが最も危険な理由。

  • イノベーション
  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >

 

 

「アイデアによるイノベーションは、ほかのあらゆる種類のイノベーションを全部合わせたよりも多い。10の特許のうち7つか8つはこの種のものである。企業家や企業家精神についての文献で取り上げられている新規事業の多くがアイデアに基づく。ジッパー、ボールペン、エアゾール缶、缶のフタの類である。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

企業の研究開発と称されているものの多くも「アイデアを発見する」ための作業だとドラッカーは言う。
これはすなわち、もっともポピュラーなイノベーションかと思いきや、ドラッカーはアイデアによるイノベーションに対して警鐘を鳴らす。

 

「アイデアはイノベーションの機会としてはリスクが大きい。成功する確率は最も小さく、失敗する確率は最も大きい。この種のイノベーションによる特許のうち、開発費や特許関連費に見合うだけ稼いでいるものは100に1つもない。使った費用を上回る金を稼ぐものは500に1つである。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

しかも悪いことに(?)、アイデアによるイノベーションのうち、いずれに成功のチャンスがあるか、いずれに失敗の危険があるかは誰にも分からない。
数ある類似のアイデアの中で、なぜいま我々が手に取っている商品やサービスが成功したのか、NO.1になっているのか。
昔からいまに至るまで、「ヒット商品の成功の理由」は常にメディアの定番企画であり、コンサルタントたちはその分析・理論をクライアントに対して売り込んでいる。
しかし、せめて語られる真実は「イノベーションに成功する者は発明しつづける。何でも試す。そのうちに成功する」だったりする。そして、これですら根拠はない。

 

「スロットマシーンで勝つ方法に根拠がないように、アイデアの追求において執拗さがよい結果を生むなどという説を裏づける証拠はない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

アイデアによるイノベーションの予測が難しく失敗の確率が大きい理由は、そもそもアイデアなるものがあまりに曖昧であることによるとドラッカーは指摘する。
しかもたとえアイデアが満たしうるニーズが明らかになったとしても、問題の具体的な解決策は自動的には出てこない。
あとになって答えることは容易だが、事前に答えることは基本的には不可能だ。

 

「企業家たる者は、いかにもろもろの成功物語に心惹かれようとも、単なるアイデアによるイノベーションに手をつけるべきではない。つまるところ、ラスベガスでも毎週誰かがスロットマシーンで大儲けしている。だが、スロットマシーンで遊ぶ彼や彼女にできることは、あとで困るほど金を注ぎ込ま...

こちらは会員限定記事です。
無料会員登録をしていただくと続きをお読みいただけます。

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。