TOP スペシャルコラムドラッカー再論 X-TECHの魅力とリスク。

2021/03/08

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第258回

X-TECHの魅力とリスク。

  • イノベーション
  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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いま注目のベンチャー、大型の資金調達で紙面を賑わすベンチャーは多勢がX-TECH系企業だが、ドラッカーはこの「ハイテク」産業についての特徴を次のように述べている。

 

「投機熱を伴う解放期のあとに厳しい整理期が続くというパターンは、特にハイテク産業で現れやすい。何故ならば、ハイテクは脚光を浴び多くの新規参入と投資を引きつけるからである。期待も大きい。(中略)ハイテクは、中ぐらいの成功には何の価値もないという伸るか反るかの勝負である。それゆえにこそ、ハイテクにおけるイノベーションには大きなリスクが伴う。しかもハイテクは、かなり長い間利益をあげることができない。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

1940年代から始まったコンピュータ産業は、産業全体として見る限り、収支がようやく合い始めたのは1980年代からだそうだ。
1990年代半ばから始まったインターネット産業も、おそらく産業全体の収支という観点では2000年代半ば過ぎ、ブロードバンドや4Gが普及してからとなるだろう。

 

こうなるのは、リサーチ、技術開発、技術サービスに多額の資金を注ぎ込む必要があるからだ。

 

「ハイテク産業は、たとえ現状を維持するためであっても、常に速く走らなければならない。もちろんこれもハイテク産業の魅力である。しかしこのことは、整理期が訪れたとき、ごく短期の嵐を乗り切るのに必要な資金的余裕さえ残していない企業がほとんどであるということを意味する。ほかの産業に比べて、ハイテク産業が、特に資金的な見通しを必要としながら資金的な見通しが困難な原因もここにある。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

勢い、X-TECHベンチャーがこぞってまず資金調達から入るのも、これが理由だ。

そもそも、これまで見てきたドラッカーが紹介する7つのイノベーションのうち、他のものは全て既に起こった変化を利用するものだった。

それに対して知識によるイノベーションは、イノベーションそのものが変化を起こす。その変化の行く末知れず、さらにその変化が起きたものを顧客が好むのか否かなど事前に知る由もない。

 

「新知識によるイノベーションが世に受け入れられるかどうかは賭けである。オッズはわからない。隠されたままである。誰も気づいてはいないが、受け入れてもらう可能性は高いかもしれない。逆に、社会がイノベーションを待望していることが確実であっても、誰も受け入れてくれないかもしれない。反発さえされるかもしれない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

では知識によるイノベーションは、賭けるしかないのだろうか?...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。