TOP 社長を目指す方程式 異動・昇進・転職…新職場で「スタートが肝心」の本当の理由

2021/03/02

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第60回

異動・昇進・転職…新職場で「スタートが肝心」の本当の理由

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  • ビジネススキル
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上 和幸

 

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今回の社長を目指す法則・方程式:

「確証バイアス」「予言の自己成就(自己実現)」

 

4月の新年度が近づいてきました。流通業界などでは一足先に新年度に入り、新卒社員の入社式が行われたり、組織変更や定期異動で多くの人が新しい職場に赴きます。転職される方々も、区切りの良い年度替りで前職を退職し、次の会社に入社される予定の方も多くいらっしゃいますね。

 

上司の皆さんが異動や昇進、あるいは転職した際に、新たな職場やチームを掌握するのに「最初が肝心」とはよく言われることです。着任後「最初の90日」の大切さを説いたビジネス書なども色々と刊行されています。そして、これは心理学的にも実証されていることなのを、皆さんはご存知でしたでしょうか?

 

人は第一印象が100パーセント?!

「今度来たA部長、どうやら相当やり手らしいよ。早速課長たちと面談して、うちの部の問題点をズバリ指摘して、対策の指示を出したって」
「新任のB課長、なんだか頼りないよね。こちらが気を使って挨拶しにいったのに、なんだか覇気なく、ボソボソ喋るんだよな」

 

人は概ね、第一印象であらかたその人の印象というものが決まるものですが、この第一印象が大事だということは「確証バイアス」から納得がいきます。

 

「確証バイアス」とは、自分の考えや意見を検証しようとする際に、それを支持する情報ばかりを集めてしまい、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことを言う、認知心理学や社会心理学における用語です。

 

仕事や職場を例に取れば、私たちは一度ある人を、できる人だと思ってしまうと、その人の「できる部分」にばかり目がいきます。逆にダメな人だと思うと、その人の「ダメな部分」ばかりを拾うようになるのです。

 

どうでしょう、思い当たるところがありませんか? あるいは「だって、それは事実そうだしなぁ…」と思われているかもしれません。
ひとつ確かなこととして言えることは、もちろん私たちの周りには「できる人」と「ダメな人」が存在していますが、私たちが思っているほど「ダメな人」はダメな部分ばかりではなく、「できる人」もできることばかりではないということです。

 

残念ながら、私たちは「確証バイアス」という偏見に塗れているのです(苦笑)。「人は見た目が100パーセント」という漫画・ドラマがありましたが、まさに「人は第一印象が100パーセント」。であれば、上司の皆さんは、これを逆手に使わない手はないですね。「確証バイアス」をうまく使うには、最初が肝心。いや、最初だけがワンチャンなのです。

第一印象の評価は「自己成就(自己実現)」される!

さて、「確証バイアス」とは、人が陥るひとつの偏見や思い込みです。ところがこれは、単なる錯覚や偏見、想い込みだけに終わらないのが怖いところです。

 

私たちには「予言の自己成就(自己実現)」という習性があり、たとえそれが根拠のない噂や思い込みであっても、その受け手がその状況が起こりそうだと考えて行動することで、事実ではなかったはずの状況が本当に実現してしまうということが往往にしてあるのです。これはアメリカの社会学者、ロバート・K・マートンが提唱した理論です。

 

「できる人」だと認められた人は、その良い印象や評価を維持しようと頑張るため、結果として、本当にデキる人になる確率が高まります。逆に「ダメな人」だと烙印を押されてしまった人は、やる気を失い腐ってしまい、本当に「ダメな人」になってしまうのです。怖いですね…。

 

よく「私、褒められて伸びるタイプなんです」と公言する部下がいますが(笑)、本来、これは否定されています。「褒める」という報酬ありきで育成やマネジメントを行うと、心理学的には徐々に褒められることに慣れていってしまい(鈍感になり)、最終的には褒められても何も感じず、逆に褒められないと何もしない人になってしまうとされています。

 

ただ、「予言の自己成就」の観点から見れば、褒められることは評価され、認められている証であり、「褒められる自分」を維持し続けるために頑張って、良い業務成果を出し続ける努力をし、その人が成長することにつながると言えるでしょう。

 

このあたりのさじ加減や動機付けの妙は、行動心理学の活用をベースとしながら人材開発や人材評価・選抜を生業とする私としても、非常に興味深い部分です。

 

「確証バイアス」を逆手に取るキャリア戦略

さて、ここまで見てきて、この異動・昇進・転職の季節に、新職場でどうスタートを切るのがベストか、もうあらかたイメージいただけたことと思います。

 

最初が肝心、第一印象が勝負! これが絶対条件です。
新しい職場では、極論、最初はバーチャルであっても「デキる人」「リーダーシップのある人」「人として信頼できる人」「感じの良い人」というようなイメージを同僚・部下・上司に植え付ける努力に1000%エネルギーを注ぎましょう。

 

仕事上のあなたという存在は、あなたという人の中の「いくつかある役割の中のひとつ」に過ぎません。「職場でのあなた」という配役を演じれば良いのです。そこで良いファーストインプレッションを獲得できたならば、そこからは「予言の自己成就(自己実現)」で、周囲が評価してくれるあなた、認めてくれるあなたを維持し続けていくべく頑張れば良い。結局のところ、そうして人は成長し、良い意味で脱皮・変身していく社会的生き物です。

 

上司のみなさんには、「確証バイアス」を自分のためにうまく使い、一方では部下たちや上司、取引先などに対しては極力その罠から逃れて、その人の本当の姿を捉えるように努力したいですね。
当人の中での良い部分とそうでない部分とを客観的に把握することも大事ですし、当人と別の同僚などを比較し、それぞれのアウトプットを比較してみることも効果的です。案外、上司としてのあなたの色眼鏡の傾向に気がつくことになるかもしれませんよ。

 

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人は誰もが、限られた情報や印象に基づき、勝手に因果関係を見出しているものです。上司の皆さんには、自分にも相手にも、良い部分は戦略的に活かし、ネガティブな側面については冷静かつ客観的に見ようとする姿勢があってこそ、社長への道に一歩近づくのです。

 

 

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※この記事は、「SankeiBiz『井上和幸 社長を目指す方程式』」の連載から転載したものです。
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プロフィール

  • 井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。