TOP 経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える 「面接時に社長や人事部長はあなたの何をどう見ているのか?」

2021/02/19

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経営幹部・エグゼクティブのためのキャリア&転職を考える

第8回

「面接時に社長や人事部長はあなたの何をどう見ているのか?」

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お見送りの理由は「熱意の欠如」

これは私の失敗談です。もう何年も前のことになります。

 

事業部長のAさんが転職のご相談に来られました。洗練された着こなしで、知性を感じさせる雰囲気。数々の新規事業を立ち上げグロースさせてきた、実績を持った方です。私はキャリアコンサルティングが終わった時点で、あるWebメディアを手掛ける企業をご紹介しました。その会社はIPOを目前に控えたベンチャーで、厳選された人材しか採用しない方針でした。素晴らしいご実績と、社風に合う人物タイプという観点からその企業をご紹介し、早速応募することになりました。Aさんは書類選考を通過し人事部長面接もパスして、順調に最終面接へと進みました。しかし私は自信をもって推薦したものの、実は内心、分からない一抹の不安を感じてもいた。その不安の正体が分からないまま、最終面接は終わり、結果は不合格。このことは、苦い思い出として残っています。

 

Aさんが最終面接を通過しなかったのはなぜか。その理由は社長によれば「熱意の欠如」だったということでした。私が抱いていた一抹の不安とは、熱意の欠如だったのだろうか…。なんとなく「熱意」という言葉がしっくりこない私は、Aさんに何が足りなかったのかを考えていました。

人事部長が見ているのは「過去、今」、社長が見ているのは「今、未来」

最終面接では何が起こっていたのでしょうか。実は面接の各段階においては、候補者を見るポイントが違います。時間軸という観点で、Aさん、人事部、社長が見ている時間をそれぞれ「過去、今、未来」に分けて考えてみます。人事部が見ていたのはAさんの「過去、今」であり、社長が見ていたのはAさんの「今、未来」です。社長はAさんと自分の「今、未来」を照らし合わせ、働く仲間として共に自社の事業を作っていくことができるだろうか、ということを確認していたのです。社長は様々なことを想像しながら、Aさんが「今」持っている経験・価値観に加えて、自社の事業で実現したい「未来」という不確実性が高いものも見ていました。

 

一方、人事部長は幹部採用において求められる経験や自社に合う人物タイプについて、詳細まで把握しています。候補者の過去の経歴から推測される仕事の習熟度や、周りの社員と馴染める人物かどうかを確認し、面接合格の可否を決めています。幹部採用においては候補者の「過去、今」については厳しくチェックしているはずです。

 

熱意の正体は何か

しかしAさんは「熱意が感じられない」と言う理由で、社長による最終面接を通過しませんでした。私が感じていた一抹の不安とは実は、一体何がやりたいのがよくわからないということでした。「将来はどんな事業に携わりたいですか」とお伺いしても、「言われたことはなんでもやりたいですし、やってきました」という答えが返ってくるだけでした。私はAさんが「自分がこうなりたい」という明確なイメージを持てていないような気がしていました。そうか…懸念の正体はここだったのかもしれない。社長が思い描く事業の「未来」は何で、それに対するAさんの「意志」はどうなのか、そのすり合わせができていなかったのではないだろうか…。

 

最終面接では、人事部長が確認した「過去、今」が採用基準に達しているだけでは通過しません。社長が先に面接するのか、最終面接で初めて面接するのかは企業によって違いますが、社長が見ているもので人事部長が見ていないものは、候補者の「未来」です。社長はこんな世界が広がっていて欲しい、こんな事業を作ってみたい、こんなサービスが世の中を変えるはずだ、というような未来に対する強い理想を持っています。そんな社長の想いに共感してくれる同志を面接で見極めたいのです。

 

特に幹部採用という観点においては、社長は意志を持った仲間と目指すべき方向を定めて、事業の未来をイメージしたいと思っています。「言われたことはなんでもやりたいし、やってきた」というAさんからは「意志」を感じ取れません。「意志」のないAさんは「未来」を描けていないのです。そして「未来」を描けないAさんからは「熱意」を感じ取れず、社長はAさんが活躍できるイメージが持てなかったのです。

 

あなたは社長に賭けることができますか

幹部採用は不確実性の高い「未来」に対する「賭け」です。 Aさんの「未来に対する意志」がすっぽりと抜けていたため、社長は「我が社の未来をこの人とともに作ってみたい」と思うことはできませんでした。そこに気づかず面接を進めてしまったのは、私の失敗でした。

 

人事部長は候補者の「過去、今」を見て、採用基準をクリアーしているかどうかを判断し、社長は「今、未来」を見て採用を決定します。転職先で何を実現したいのかという「未来」が描けていないAさんからは「意志」を感じられず、「意志」のないAさんからは、事業に賭ける「熱意」は生まれませんでした。これだけ素晴らしい実績を持ち、社風に合う人物タイプだったとしても、採用されないという事態は起こるべくして起こったのです。

 

その時私は何が起こっていたのかを理解し、なぜ社長がAさんを採用しなかったのか腑に落ちました。候補者の未来は明確になっているのか、事前に確認することが我々の役割なのです。それを明確にし、人事部長が見ているもの、社長が見ているものをはっきりと認識できれば、あなたが面接の時、誰に何を伝えれば良いのかが分かるはずです。あなたが転職に賭ける「意志」とは何でしょうか。あなたはそこから溢れ出る「熱意」を、社長に伝えることはできますか。

 

私にとってこの出来事は、今でも苦い思い出として残っています。社長が採用に賭ける想いを、私はなぜ理解できなかったのだろうか。Aさんの「未来に対する意志」をなんとかして引き出すことはできなかったのだろうか。私の力不足だったと反省するとともに、幹部採用の面接では、是非あなたの思い描く「未来」を社長に伝えていただきたいと思います。

 
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