TOP スペシャルコラムドラッカー再論 認識の変化の分かりやすさと、それをイノベーションの機会とすることの難しさ。

2021/02/08

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スペシャルコラムドラッカー再論

第254回

認識の変化の分かりやすさと、それをイノベーションの機会とすることの難しさ。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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読者経営者・マネジメントの皆さんもおそらく、物事をポジティブに未来志向で捉えることの重要性のたとえとして、「コップ半分の水」の話を使われるのではないかと思う。このたとえ話の生みの親がドラッカーだということを、ご存知だっただろうか?

 

「コップに「半分入っている」と「半分空である」とは、量的には同じである。だが、意味はまったく違う。とるべき行動も違う。世の中の認識が「半分入っている」から「半分空である」に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

経済、政治、教育、娯楽、健康、生活、社会…あらゆる側面で、我々を取り巻く認識は刻々と変化していく。食べる量を満たしたかった戦後から高度成長期の時代には考えられないくらい、いまは過食に対する後ろめたさやタブー感がある。タバコの煙をくゆらすのが格好良かった時代には、経営者やエグゼクティブが早朝から爽やかにランニングやプール、ジムで汗を流す姿は軟弱に見えただろう。
ドラッカーは『イノベーションと企業家精神』の中で、人種に対する認識の変化や中流階級意識の変化を挙げている。トランプ政権で一気に噴出した米国ローカルに住むブルーワーカーを中心とした白人の不満は、人口構成的にも20世紀の半ばまでは考えられかった米国内での主流人種の攻守交替がもたらした認識の変化だ。これらの認識の変化を捉えて新しいライフスタイル、食生活、あるいはなにがしかの不満解消ツールを生み出したものがイノベーターとなる。

 

「認識の変化が起こっても実体は変化しない。意味が変化する。「半分入っている」から「半分空である」に変化する。自らを労働者階級として一生身分が変わらないとする見方から、中流階級として社会的地位や経済的機会を自ら変えることのできる身分にあるとする見方へと変化する。そのような認識の変化は速い。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

アメリカ人の過半が、自らを労働者階級ではなく中流階級として考えるようになるには10年とかからなかった、とドラッカーは言及する。日本もそれに追随し、1970年代から2000年代初頭までは「1億総中流」時代と言われた。そしていま、米国も日本も、それから20年で、また大きな認識の変化が起こった。二極化の時代、「1億総中流」から「1億総底流」の時代へ、分断の時代へと(残念ながら…)移っている。

 

「社会学者や経済学者が認識の変化を説明できるか否かは関係ない。認識の変化はすでに事実である。多くの場合、定量化できない。定量化できたとしても、その頃にはイノベーションの機会とするには間に合わない。だがそれは、理解できないも...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。