2021/01/12
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第250回
ニーズに基づくイノベーション成功のための5つの前提と3つの条件
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸
ニーズに基づくイノベーション、特にプロセス・ニーズによるイノベーションが成功するには、5つの前提があるとドラッカーは言う。
1)完結したプロセスについてのものであること
2)欠落した部分や欠陥が一か所だけあること
3)目的が明確であること
4)目的達成に必要なものが明確であること
5)「もっとよい方法があるはず」との認識が浸透していること(受け入れ態勢が整っていること)
しかも、ニーズに基づくイノベーションには3つの条件がある。
「第一に、何がニーズであるかが明確に理解されていることである。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)
なんとなくニーズがあると感じられるだけでは不十分で、それだけでは目標の達成のために何が必要なのかを明らかにしようがないのは、読者経営者諸氏にとってもご経験上自明だろう。
「第二に、イノベーションに必要な知識が手に入ることである。」(『イノベーションと企業家精神』)
高速通信や高速演算のニーズは明らかであるが、その実現は5G・6Gの技術、量子コンピュータに関する知識や技術が手に入って、初めてなされるということだ。科学や医療・宇宙関連などで、ニーズは明らかだが、まだその実現のための知識が得られていない、というものは数多く存在している。今後のニーズ対応の宝庫とも言え、楽しみな分野でもある。
「第三に、問題の解決策がそれを使う者の仕事の方法や価値観に一致していることである。」(『イノベーションと企業家精神』)
多くのものがまず産業用のものとして生まれ、その操作方法などが簡易化されて一般製品となる。写真(カメラ)からプリンター、コンピュータ(パソコン)に至るまで。今で言えば、プログラミングなどがこれにあたるだろう。
ニーズによるイノベーションの機会は体系的に探すことが可能だ。ニーズに基づくイノベーションは体系的な探求と分析に適した分野である。
「しかし、ひとたびニーズを発見したならば、まず先に述べた5つの前提に照らしてみることは必要である。しかる後に3つの条件に合致しているかどうかを調べることが不可欠である。」(『イノベーションと企業家精神』)
すなわち、ニーズは明確に理解されているか、必要な知識は現在の科学技術で手に入れられるか。そして得られた解決策は、それを使うはずの人たちの使い方や価値観と一致しているか。
従来型の事業やサービスが陳腐化、毀損していることから新規事業の取り組みモードが非常に強くなっているが、ふと足元に目をやれば、我々の周囲には、まだまだニーズによるイノベーションの機会があふれているかもしれない。