TOP スペシャルコラムドラッカー再論 プロセス・ギャップからプロセス・ニーズイノベーションを起こす。

2020/12/21

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スペシャルコラムドラッカー再論

第248回

プロセス・ギャップからプロセス・ニーズイノベーションを起こす。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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前回までに、イノベーションの機会としての4つのギャップのうち(1)業績ギャップ、(2)認識ギャップ、(3)価値観ギャップについてそれぞれ見た。残す一つは、プロセス・ギャップだ。プロセス・ギャップは、消費者が何かの商品やサービスを利用する際に、その利用プロセスの中のどこかに感じる不安の部分に存在している。

 

「製品やサービスの目的は消費者の満足にある。この当然のことを理解していれば、プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用することは容易であり、しかも効果的だった。しかしそれでも深刻な限界がある。プロセス・ギャップをイノベーションの機会として利用できるのは、その世界の中にいる者だけだということである。決して外部の者が容易に見つけ、理解しイノベーションの機会として利用できるものではないのである。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

さて、イノベーションの機会としてこれまで見てきた、予期せぬ成功や失敗、ギャップは、すでに存在する機会だ。対して、「必要は発明の母」。まだ存在していないもの、イノベーションの母としてのニーズがある。

 

「イノベーションの母としてのニーズは限定されたニーズである。漠然としたニーズではない。具体的でなければならない。それは、予期せぬ成功や失敗、ギャップと同じように企業や産業の内部に存在する。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

その主なものは、プロセス上のニーズ、労働力上のニーズ、知識上のニーズだとドラッカーは言う。ここからそれぞれ見ていこう。まずは、プロセス・ニーズだ。

 

「イノベーションの機会としてのプロセス・ニーズの利用は、ほかのイノベーションとは異なり、状況からスタートすることはない。課題からスタートする。状況中心ではなく課題中心である。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

それは、知的発見によって、すでに存在するプロセスの弱みや欠落を補うためのイノベーションだ。誰もがすでにそのニーズの存在を知っている。しかし誰も手をつけていない。ひとたびイノベーションを行うや、直ちに受け入れられ、標準として普及していく。冒頭に見たプロセス・ギャップを埋めることでプロセス・ニーズによるイノベーションは成される。プロセス・ニーズを明確にすることが、直ちに問題に解決につながるのだ。

 

 

 

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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