2020/12/14
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スペシャルコラムドラッカー再論
第247回
価値観ギャップに素直になれ。
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
ここまでイノベーションの機会としての4つのギャップのうち(1)業績ギャップ、(2)認識ギャップについて見てきた。次に、価値観ギャップだ。
「彼らの音楽はダメだね。ギターのグループはもう流行りじゃないよ」(ビートルズをオーディションで落としたデッカレコードの幹部、1962年)
「15社もの外国車メーカーがすでにいるというのに、日本車がアメリカ市場でシェアをとれるとは思えない」(ビジネスウィーク、1968年8月)
「個人が家庭でコンピュータを持つ理由なんてない」(ケン・オルセン、DEC(当時の大手コンピュータ会社)社長、1977年)
「iPhoneのようなものが流行るわけがない」(スティーブ・バルマー、マイクロソフトCEO、2007年)
— GLOBIS知見録「業界キーパーソンの予測はなぜ外れるのか?」より
我々は上記の予測に対する結末を知っている。その我々からすれば、「何をバカなことを言っていたんだ」と鼻で笑うことだろうが、しかしこれらは当時、大真面目に語られたことだったのだ。そこにはまさに、価値観ギャップが存在していた。
「価値観ギャップの背後には、必ず傲慢と硬直、それに独断がある。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)
その当時、業界を熟知していた大御所や識者がこれに当たるだろう。一方では、昔から今に到るまで、常に業界外の「シロウト」の中にイノベーターが存在しており、出現する。
「イノベーションを行う者が価値観ギャップを利用しやすいのはこのためである。しかも彼らは、邪魔されずに放っておかれる。(既存の)生産者や販売者は、ほとんど常にといってよいほど、顧客が本当に買っているものがなんであるかを誤解している。」(『イノベーションと企業家精神』)
もちろん我々経営者は、自分たちが提供しているもの・ことの価値こそ、顧客にとっての価値であるという信念を持ち事業を展開しなければいけない。成功のためには、自身の事業・仕事の価値を信じ、真剣に取り組む必要がある。
「しかしそれにもかかわらず、生産者や販売者が提供していると思っているものを買っている顧客はほとんどいないのである。彼らにとっての価値や期待はほとんど常に供給者の考えているものとは異なる。」(『イノベーションと企業家精神』)
そのようなときに我々は、「消費者は分かっていない。付加価値や品質に対して正当な対価を払おうとしない」と言いがちだ。しかしそのようなときにこそ、提供者が顧客の価値だとしているものと、顧客が本当に価値だとしているものとの間にギャッ...
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