2020/11/30
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スペシャルコラムドラッカー再論
第245回
イノベーションの機会としての、ギャップの存在。
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
前号まで、イノベーションの第一の機会(「予期せぬ成功、失敗、出来事を利用する」)を数回に渡りご紹介してきた。
今回からは、第二の機会=「ギャップを探す」について見ていく。
ギャップとは、現実にあるものと、あるべきものとのかい離、不一致だが、
「(なぜそのかい離・不一致が起きるのか)原因はわからないことがある。見当さえつかないことがある。だがそれにもかかわらずギャップの存在はイノベーションの機会を示す兆候である。それは、地質学でいう断層の存在を示す。まさに断層はイノベーションへの招待である。断層では、経済構造や社会構造に変化をもたらす不安定な状態となる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)
ドラッカーがここで言うギャップは、経営計画の未達のような数値的なものではなく、マネジメントに提示され検討される数字や報告の類ではなく定性的なものを指している。
「ギャップとは予期せぬ成功や失敗と同じように、すでに起こった変化や起こりうる変化の兆候である。ギャップは予期せぬ事象と同じように、一つの産業、市場、プロセスの内部に存在する。したがって、その産業や市場、プロセスの内部、あるいは周辺にいる者ははっきり認識することができる。まさにそれらは彼らの目の前にある。」(『イノベーションと企業家精神』)
ところがしかし、同時にこうしたギャップは、内部の者がそれを当然のこととして受けとめてしまいがちなものでもあるとドラッカーは指摘する。
当事者は、「ずっとそうでしたよ」と言うが、実はずっとそうだったわけではなく、発生したのはつい最近、というようなことが、業種業態を超えてそこここで発生する。
ドラッカーはイノベーションの機会としてのギャップを4つに分類している。
(1)業績ギャップ、(2)認識ギャップ、(3)価値観ギャップ、(4)プロセス・ギャップ、だ。
「製品やサービスに対する需要が伸びているならば、業績も伸びていなければならない。利益をあげることは容易なはずである。上げ潮に乗っているはずである。そのような状況にありながら業績があがっていないのであれば、何らかのギャップが存在すると見るべきである。」(『イノベーションと企業家精神』)
この場合のギャップは一つの産業全体、あるいは社会部門全体におけるマクロ的な現象であることが多い。
通常、このギャップにいち早く気が付き、イノベーションの機会として利用するのは、ドラッカーの表現として「中小の専門企業」、いわゆるベンチャーやニッチな専門中小企業だ。この機会を捉え利用するものは、長期...
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