2020/10/22
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敏腕キャピタリストの着眼点
第18回
起業家、投資家、VC――3者間の信頼で新たな産業とエンタメの形を創出する。 【前編】
- 組織
- 経営
今回の「敏腕キャピタリストの着眼点」は、『i-nest capital(アイ・ネスト・キャピタル)株式会社』代表取締役社長の山中卓氏にご登場いただきます。同社は、エンターテインメントおよびライフスタイル領域を中心に、IT利活用とデジタル化による高成長領域への投資を行っているベンチャーキャピタルです(2019年創業)。
山中卓氏は東京大学経済学部を卒業後に日本興業銀行へ入行。更に「業を興す仕事」に特化したいと考え、ベンチャーキャピタルに移り、以来、キャピタリストとして15年以上の実績を持っていらっしゃいます。山中さんに、現職を選んだ経緯やその魅力、ベンチャー経営者を見る際のポイント、そして、今注目すべき投資先企業などをうかがいました。前後編の2回にわたってお届けします。
口説き文句は、「“業を興す仕事”をやりたいならVCに来るべきだ!」
井上 新卒で日本興業銀行に就職されています。
山中 私が入行したのが1994年。その直後の97年、98年に山一証券が破綻したり、長銀が破綻したりと、金融危機が起きました。
井上 当時は、バブルが崩壊した部分はだいぶ表面化してきていましたが、就職先として金融業界はまだ人気でしたし、その中でも興銀はトップクラスでしたね。
山中 前職(モバイル・インターネットキャピタル株式会社)時代の投資先で、モバイルファクトリーという上場を果たした企業があります。ここの社長は宮嶌さん (裕二氏)で、私と同い年です。私は新卒で興銀に入り、彼はソフトバンクに入りました。
後に親しくなって、よくお酒を飲んでいるときなどに、彼は「僕は興銀には入れませんでしたから」と仰るんですね。しかし、それを言うなら、私のほうこそ先見の明がなさ過ぎました。そのころ、金融機関はもう下り坂に入っていましたからね。
当時はまだ紙媒体のみで、企業側発信の情報ばかりでしたから、就職先の人気企業は、世の中の本当の流れよりも何年か遅れていました。いまはもっとキャッチアップが早いので、そんなことはないのかもしれませんが。
井上 いまでもまだそうした傾向はありますよ。
山中 学生のときには、会社そのものを見るというよりも、イケている先輩や「こいつはできる」と思っていた人間がどこに就職したかに左右されるところがありますよね。
その点、ソフトバンクに入社した宮嶌さんには先見の明があり、さすがだなと思います。ちなみに、彼はソフトバンクのあとに、サイバーエージェントに転職していますが、社員番号が確か1桁台とか10番台とかでしたからね。
井...
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