TOP エグゼクティブの思考をDoubRingで可視化する 大人気ドラマ「半沢直樹」で改めて考える、会社と自分の関係 ー結果と解説ー

2020/10/12

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第2回

大人気ドラマ「半沢直樹」で改めて考える、会社と自分の関係 ー結果と解説ー

  • エグゼクティブの思考をDoubRingで可視化する
  • 著述家・ビジネスコンサルタント 細谷 功

「倍返しだ」の決め台詞で世のビジネスマンの心をつかんだ「半沢直樹新シリーズ」は、テレビドラマ不振の時代にあって令和ドラマ最高と言われる30%以上の視聴率をもって最終回を終えました。

 

もちろん誰もが「弱きが強きをくじく」「勧善懲悪」といったストーリーがフィクションの世界の話だとはわかっていても、いかにも普通の会社でもありそうな会社生活での理不尽な出来事が微妙なリアリティを持った「あるある感」を醸し出すことで多数の人の共感を得られたということなのでしょう。

 

具体的に言えば、誰もが感じることがある「会社の利害とモラルとの葛藤」であったり「上司から与えられた理不尽な要求と良心との葛藤」をすっきりと「倍返し」で解消してくれることがこの上ない「すっきり感」を与えてくれることが多数の人の「もやもや解消」の原因になってくれたことは間違いありません。

要は会社勤めしている人が感じる理不尽というのは主に「会社と自分との関係」あるいは「上司―部下の関係」から生じているということです。このことから、会社員が半沢直樹に感じるすっきり感というのは、いま自分が感じている「会社と自分との関係」や「上司―部下の関係」とあるべき両者とのギャップをドラマの登場人物たちが埋めてくれるからではないでしょうか?

 

そこでこれらのギャップを可視化するツールとしてDoubRingを用いたアンケート回答を集計しました。その結果から「会社と社員との関係」や「上司と部下の関係」について考えてみたいと思います。

 

DoubRingの手法について簡単に説明します。DoubRingは上記のような2つの言葉の関係性を以下の9つのパターンで表現してもらうことで個人間のそれらの言葉の関係の認識の違いを可視化して比較できるようにしたツールです。

この手法でKEIEISHA TERRACE読者の経営層〜マネジメント層を中心とした男女105名に以下の4つの質問に回答いただいた結果を示し、これらの結果から「会社と社員の関係」「上司と部下の関係」について考えてみたいと思います。

 

①会社と自分の関係は?

②上司と部下の関係は?

③会社と半沢直樹の関係は?

④上司と半沢直樹の関係は?

 

特に先の記述から①と③の回答の差、および②と④の回答の差のギャップから、先の半沢直樹への共感の要因が把握できるのではないかと思います。

 

「会社と自分」「会社と半沢直樹」の関係性

まずは①「会社と自分の関係」と③「会社と半沢直樹の関係」の差を見てみましょう。各々の質問に関しての多数派の意見を見てみましょう。

両者の違いとして「会社と半沢直樹」の関係性で最も多かった(18%)選択肢が「会社の中に半沢直樹が含まれている」というパターンであったことです。これは会社に半沢直樹が取り込まれているという意味でないことは明らかですが、そうすると想像されるこのスタンスは「会社の中で孤軍奮闘している姿」を現しているという感じでしょうか?

そうなると、逆に「会社と自分」ではこのパターンが上位に表れていないことから、自分はそこまで会社にどっぷりつかる気はないということの現れという解釈もできます。それを示すかのように、1位と2位には、「自分の中に会社が入り込まない領域が存在している」パターン4、5が入り、これらの合計が6割に及んでいます。

 

対照的なのは、「会社と自分」の3番目、13%の人が選んだのは「自分の中に会社がある」という全く包含関係が逆のものであったことです。ひとつの要因として、今回の回答者が経営層を中心としたものであったことは挙げられるでしょう。おそらくこれは担当レベルでは結果が異なるであろうことは容易に予想されます。

 

そもそも半沢直樹は上司をまったく気にしていない?

次に②「上司と部下の関係」と④「上司と半沢直樹の関係」の差からわかることを考察してみましょう。

 

明らかに着目すべきは、「該当なし」が10%を超える上位に入っていることで、これは様々な他の言葉の組み合わせの回答では見られない状況であることから、いかに「該当なし」が強いメッセージとして受け取れるかがわかります。

 

これは「そもそも半沢直樹は上司なんかまったく気にしてはいない」ことを意味しているのでしょうか?他の選択肢は円の大小はあれ、多かれ少なかれ上司と部下が並列に位置付けられるものとしているのに対して、該当なしという選択肢はそもそもそれらの「次元が違う」ことを意味していると考えられます。

 

最後にひとつ実際のドラマから半沢直樹の言葉を引用しておきましょう。

 

「仕事は客のためにすること、世の中のためにすること」

 

そもそも仕事は上司のためにするものでも会社のためにするものでもなく、あくまでも「その上位にある顧客であり、さらにその上位の社会のためである」という仕事観がここにはあります。理想を高く仕事をしたい。でも実際の職場では上司や会社のため、その理想を曲げることも時には必要であるというビジネスマンの感じるギャップが「半沢直樹現象」のひとつの原動力であったといえるのではないでしょうか。

 

 

(編集部・井上和幸より)

細谷さん、解説をありがとうございました。非常に興味深いですね。回答くださった皆さんご自身が今、どのような会社との関係性にあるのか。上司との関係性、部下との関係性にあると感じていらっしゃるのか。半沢直樹はどうなのか?正解はありませんが、認識が垣間見え。結果をご覧いただいた皆さんも、「やはり」と思う方も入れば、「えー、そう思うの?」と感じる方も多くいらっしゃるはずです。

 

例えば皆さんご自身が、立場を変えて、その上での<理想形>について回答して見て頂くと面白いかと思います。回答者の大半が経営者および幹部の方々ですが、「自分が部下なら」「自分が中間管理職なら」「自分がトップなら」、それぞれについてどう回答されるでしょう?頭取となった?半沢直樹であれば、どのような会社との関係性、部下との関係性を構築するでしょうかね?

 

プロフィール

  • 細谷 功

    著述家・ビジネスコンサルタント

    株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等の米仏日系コンサルティング会社にてコンサルティングにて製品開発や営業等の戦略策定や業務/組織/IT改革等に従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。著書に『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(以上、東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)、『具体⇄抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)等がある。

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