TOP イマ、ココ、注目社長! 「よく伝わる手順書」の作成・管理をより簡単に進化させ、生産性向上をサポートする。【後編】

2020/08/28

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第108回

「よく伝わる手順書」の作成・管理をより簡単に進化させ、生産性向上をサポートする。【後編】

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  • 株式会社スタディスト 代表取締役 鈴木 悟史氏

 

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株式会社スタディストの鈴木悟史社長をゲストに迎えた後編では、開発中の新サービスや、事業に対する思い、人と組織、経営者観などについて話をうかがっています。 (前編はこちら

 

(聞き手/井上和幸)

次は業界特化型、用途特化型でプロダクトをつくりたい。 

――起業されたときに、「いつ頃にはこのくらいの会社にしたい」といったことを計画に落とされたり、イメージされたと思います。現在までは、同じようなイメージで来られているのか、あるいは違うのかといったことはどうでしょうか。 

 

鈴木 我々が会社名とサービス名を一緒にしていないのは、『Teachme Biz』で終わるつもりは全くないからです。今、新しい事業がようやく立ち上がる直前まで来ているのですが、初めの頃は「『Teachme Biz』だけで数十億行くぞ」と思っていました。状、当初考えていたペースから言うと、2倍の時間がかかっていますね。 

ただ、我々は800社への導入までは8人でやっていたので、よくやっていたなと思います。 

 

――8人!その人数でどうさばくのですか。 

 

鈴木 できるだけ「手順書でお客さまに働いていただく」という……(笑)。 

 

――さすが(笑)。 

 

鈴木 我々もお客様からのお問い合わせに対応するためにサポート部門を設けていますが、カスタマーサポートは2人なんですね。数千社からの問い合わせ2が交代対応しているんです。お客さまが自己解決できるように、できるだけわかりやすい操作手順をつくってご提供しておけば、コールセンターに電話をしなくて自分で解決できるので、顧客満足度を下げることなく我々側に発生するコストも下げられます。 

 

自社でやってみて思ったのですが、日本のコールセンターは全部これをやるべきだと思います。Teachme Biz』のオンラインヘルプに対して、月2万4,000件前後のアクセスがあるのですが、実際に発生している問い合わせの件数は100件前後です。しかし、手順書がなかったら2万件以上の電話がかかってもおかしくないわけですから、そう考えると席数を用意するよりまず「わかりやすい手順書を用意した方がいい。 

  

――それは、ものすごい説得力ですね。 

 

鈴木 はい、自社で実証していますからね。やはり自分たちが自社で使って気づく価値のようなものがどんどん出てきているので、提案の幅がどんどん広がってきていますね。 

かつ、コロナがあって、当社では2月17日から社内の研修を全部リモート化したです。けっこう早かったと思いますよ。人事部などは「研修はどうするですか」と言ってきましたが、「全部Teachme Bizオンラインやる」と方向転換したら、それが逆に良くて、オンラインでできることをメンバーたちが実感してしまった。実際に研修期間も16%短くなり、すごい価値に気づきました。 

 

――生産性の問題は、もともと日本で言われていて、御社も含めてそこを解決してくださる新しいものが出始めてきたところでした。そこにコロナが来て、「そうはいっても……」という感じで、3年後、5年後の変化のように思っていたことが数ヵ月で一変してしまった。 

 

鈴木 ただ、フルリモートに移行するときは、正直、業績は半減するだろうなと思いましたけれどね。実際はそうならなかった。 

 

――業態によるとは思うのですが、ITを上手く使っていったら、効率が上がる会社や職場は、まだまだ日本には多い気がします。 

 

鈴木 たくさんありますよね。我々が今仕込んでいる次の事業も、導入すると売上が上がるんですよ。手順書に関連する新サービスなのですが、多くの企業様にご協力いただいて実証実験をやると、本当に売上が上がる。先週やった飲料での実証実験では、1.7倍になりました。かついま発生しているコストを下げることもできます。このサービスは非常に高いバリューを持っていると確信しています。 

 

――御社のサービスがはまりやすい業界や職種などはありますか。 

 

鈴木 我々のサービスと相性がいい業種は4つの条件があります。多拠点労働集約型人材の出入りが激しい、オペレーショナルな業務です。例えば、小売り、飲食、宿泊、物流、ゲームセンターやスポーツクラブなど娯楽系、あとは製造業も一部ターゲットになりますね。人の出入りが激しければ激しいほど、従業員が業務手順を知らなければならない機会が増えますのでお役に立てます。 

 

――すばらしいですね。 

 

鈴木 手順書がこんなにいろいろな多様性を持って提案できるプロダクトになるなんて、私もほとんど想像していませんでしたね。初めはパワポ、エクセル、ワードの代わりみたいな感じだったので……。 

――お話しできる範囲で構わないのですが、先ほどチラっとおっしゃった、準備がほぼ整っている次の波はなんですか。 

 

鈴木 今の『Teachme Biz』は、「ホリゾンタルSaaS」なんですよ。いろいろな業種業界で、用途で使えるプロダクトということでやってきたのですが、次は「バーティカルSaaS」をつくりたい。業界特化型、用途特化型でプロダクトをつくってみたいと思っています。 

例えば、小売業で、チェーンオペレーションで従業員を採用して本部の指示があって……といった場合に、そこで本部の指示をお店が正しく実行したら売上が上がるということを、皆さんはやりたくても徹底できていない。というのは、本部からお店に飛んでいる作業指示書が文字だらけで理解がしにくい。それを『Teachme Biz』のプラットフォームを改良して、機能拡張することによって、本部指示が確実に実行される仕組みをつくったんです。特許も取得したので、それを個別のプロダクトとして開発しているところです。 

 

先ほども申し上げたように、実証実験では確実に売上が上がるので、これは「売上が上がるプロダクト」と言って大丈夫だという確信があります。 

こんなふうに、わかりやすい手順書を簡単につくって供給できるという我々の強みを生かして、新たな事業にチャレンジしている感じですね。これは無駄をなくすための世直しだと思っていて、私はそこでひと儲けしてやろうとかいう動機では喜びは感じないですよ。「こんな無駄は直すべきだ」ということを見つけたときが嬉しいです。 

 

――海外展開もされていらっしゃいますよね。これは構造的に世界中どこでも使われるものですし、特にアジアなどは業態的な観点も含めてニーズがありそうな気がします。 

 

鈴木 願わくは日本で終わりたくはないですね。今、タイ、マレーシアで事業をやっていますが、ASEAN全域で役立つ日本発のサービスをつくりたいと創業時に思っていました。現在は全ユーザーの4.7%がASEANであり、あとはどれだけスケールさせるかだと思っていたときにコロナが来てしまって……という感じです  

 

経営の楽しみを知ったらもう戻れない。37歳での独立は遅過ぎた。 

――人や組織についてもおうかがいしておきたいのですが、御社全体では今何名くらいですか。 

 

鈴木 今105人です。 

 

――鈴木さんは、幹部や社員の方々にどういうことを求めていらっしゃいますか。 

 

鈴木 私は、愛社精神などは別に要求していませんし、そんなものを持ってほしいとはこれっぽっちも思っていません。 

それよりも「事業を通して社会に貢献できる」という使命感をみんなに持ってほしいと思っています。それがやりがいになって仕事の質を変えていくと思っているからです。 

あとは自走力というか、上から降りてくるものに対して指示待ちをするのではなく、「お客さまの役に立つために今自分が何をすべきか」と考えるような組織にしていきたいと思っています。 

 

――幹部層と通常のメンバーの方々に関して、鈴木さんの採用基準は何でしょう? 

 

鈴木 ビジョンとミッションに共感できて、そのサービスを提供することに喜びを感じられるかどうかが最優先です。2つ目はチームワークを乱すような素質がないかどうか。そこは注意しますね。新規事業開発では例外もありますが。 

 

――みんながしっかり連結して、気持ちよくビジョンに向かって動けるかということですよね。 

 

鈴木 そうです。幹部陣には、事業の社会的意義や価値、何をしているのかということを伝えてきたので、エンジニアなどの採用では、私が最終選考まで一切しなくていいようになりました。 

 

――最後に1つ。恒例のご質問ですが、鈴木さんが「経営者とはこういうことをする人間だ」と思われていることは何でしょう? 

 

鈴木 会社の存在意義というのは、社会の役に立つことだと思います。それに対して、個人には自己実現や成長の欲求がある。それがクロスするステージを一人ひとりにつくってあげる、しかも、新しいステージを用意し続けてあげることが経営者の重要な役割だと思っています。応援団のようなものですね。 

そのために、経営者は風や業界のトレンドなどを読み続けなければいけないし、現状に満足してはいけない。これはインクス時代に身をもって経験したことです。 

 

――そもそも経営者になるおつもりは全くなかったということですが、ご自身が実際になられてみて、お感じになることが何かありましたでしょうか。 

 

鈴木 これはシンプルで、「もう戻れない」ということですね。経営の楽しさを知ってしまったらもう戻れません。この一点に尽きます。今は、なぜもっと早く起業しなかったのだろうと思います。37歳はちょっと遅かったですね。 

 

(構成・文/津田秀晴)

プロフィール

  • 鈴木 悟史氏

    株式会社スタディスト 代表取締役

    明治大学大学院卒。株式会社インクスにて、3DCADの機能仕様検討業務や設計システムの開発に従事し、製品開発プロセス改革のプロジェクトリーダーを歴任。その後、同社パートナー職を経て、2010年2月インクスを退社。同年3月に株式会社スタディストを設立。