TOP 成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」 世界80万キロを行脚した未来学者が予測した「これからの経済」。/『未来化する社会』

2020/06/29

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成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」

第110回

世界80万キロを行脚した未来学者が予測した「これからの経済」。/『未来化する社会』

  • 組織
  • 経営
  • 小野寺 志穂氏 ハーパーコリンズ・ジャパン 一般書籍編集部 シニア・エディトリアル・マネジャー

 

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成功する経営者は皆、多読家。
「TERRACEの本棚」では、成功している経営者が注目している、読んでいる書籍をご紹介してまいります。
今回は、『未来化する社会』
本書の編集を手掛けられた、ハーパーコリンズ・ジャパンの小野寺志穂氏に見どころを伺いました。

 

 

進歩と富は公平に分配されるわけではない。グローバル化とイノベーションの次の波は、大勢を貧困に逆戻りさせるかもしれず、世界中の中流層にとってつらいものになるだろう――

 

著者アレックス・ロスが、本書の「はじめに」でそう予言したのは2016年初頭。第一次オバマ政権で外交政策とイノベーションの専門家として活躍したロスは、当時国務省長官だったヒラリー・クリントンの側近として世界各国80万キロを行脚し、テクノロジーが経済や社会にもたらす変化のスピードを最前線で見つめてきた人物だ。

 

日本版の刊行は2016年の4月。それから4年の月日がたったいま、ロスの予言は深い重みを持って私たちに訴えかけてくる。

 

ウエストバージニアの寂れた工業地帯出身で、地元民が仕事にあぶれる姿を見て育ったロスは、学生時代に20年後の未来を見通す本があればよかったのにと思い、自分の知見を書籍にすることを決意したという。

 

ロボティクス、ライフサイエンス、電子マネー、サイバーセキュリティ、ビッグデータ、世界経済の新たな地勢学…6つの切り口で各国の最前線を深掘りしながら、「これからの経済」を予測する本書は、いま読んでも新鮮な驚きに満ちているとともに、ある種「答え合わせ」的に読んでいくこともできる。

 

たとえば電子マネーだが、日本でも2019年10月から2020年6月まで、キャッシュレスで5%還元のキャンペーンを大々的に実施したのは記憶に新しい。本書では、画期的な決済サービス「スクエア」を設立したTwitterの共同創設者・ジャック・ドーシーの話が紹介されるのだが、iPadにクレジットカードを通して電子署名するスタイルを中心に、みなさんも最近小売店で目にすることが増えてきたのではないだろうか。

 

新たな地勢学では、最先端技術で酪農ビジネスを大きく飛躍させたニュージーランドや、いまやIT大国として有名なエストニアなどを引き合いに、シリコンバレーの一極集中の終焉を予測する。

 

編集担当としていちばん心に残ったのは、ロボティクスの章。ロボット界のBIG5(日本、中国、アメリカ、ドイツ、韓国の5カ国が世界のロボットビジネスの約70%を占めている)の中でも、日本が大々的に取り上げられるのだが、そこに出てくる考察が非常に興味深い。

 

ロスいわく、技術面はもちろんだが、日本の神道には精霊信仰(アニミズム)が根付いていて、あらゆるものに魂が宿るという考え方になじみがあるため、西洋文化に比べてロボットを人間のパートナーと同じように受け入れる素地がある、だからロボットは道具でも脅威でもなく、社会の一員になれる、という。

 

一方で...

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プロフィール

  • 小野寺 志穂氏

    小野寺 志穂氏

    ハーパーコリンズ・ジャパン 一般書籍編集部 シニア・エディトリアル・マネジャー

    一般書籍市場で世界第2位の規模を誇るハーパーコリンズ・パブリッシャーズ(本社NY)の日本支社で、ビジネス・ノンフィクション/海外文芸部門の編集長として、グローバルな視点の書籍を多数紹介している。担当書籍に、『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』クレイトン・M・クリステンセン他、依田光江[訳]、『食卓の経営塾 DEAN & DELUCA 心に響くビジネスの育て方』横川正紀など。

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