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2020/04/27

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スペシャルコラムドラッカー再論

第216回

グローバル企業とは、「多国籍企業」ではなく「超国籍企業」である。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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皆さんもお聞きになった(学生時代に経済学で学んだ)ことがあるであろう理論に、「比較優位論」がある。国家間経済における古典理論で、それぞれの国がその土着の生産物について比較優位性を持つので、それぞれが最も優位にあるものを生産し、国家間取引を行えば、あらゆる資源が最適化されるというものだ。
その見本として教科書に例示されるのが、アダム・スミスが示したイギリスの羊毛とポルトガルのワインの交易である。アダム・スミスの理論によれば、それぞれの国民国家が生産要素を統合する。そこで交易されるものは完成品である。移動するのは完成品であり、生産手段のほうは移動しない。

 

「しかし、グローバル経済が市場を統合する存在となったからには、もはや生産の主体は国ではない。製品は世界中どこでも同一である。あるいはほとんど同一である。移動するのは生産手段である。国家間経済では、貿易とは財サービスのものだった。いまやそれは生産手段のものである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

 

いまや我々は、このドラッカーの解説を聞くまでもなく、生産地最適化のために、国内外でのもっとも優位な生産地を探し求め、その地で生産を行う。図らずもコストメリットの大きさから85%を中国で生産していたマスクが、この新型コロナ禍の中で調達困難を呼ぶこととなっている訳だが…。

 

「今日のところ、国際的な企業の多くは、海外子会社のそれぞれが、それぞれの国で、それぞれの製品を生産するという19世紀のシンガー・ミシン型である。しかしすでに潮流は、グローバル市場のためのグローバル規模における生産要素の統合に向かっている。これが市場の力学に従った流れである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

 

最適な国で企画し、最適な国で生産し、最適な市場が存在する国で販売する。
ドラッカーはこうしたグローバル企業を、「多国籍企業ではなく、超国籍企業」と呼んでいる。

 

「国境はもはや決定要因ではない。それは制約要因、阻害要因、複雑化要因でしかない。今日の決定要因は、没国家のグローバル市場である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

 

グローバル企業であることの機会と問題は、多国籍であること=多国における事業展開にあるのではなく、需要・ビジョン・価値観において共通のものとなったグローバル市場の現実を受けて、グローバル企業が自らグローバルな存在になっていることにある、とドラッカーは紐解いている。

 

「ということは、グローバル企業とその戦略および行動を規定しているものは、生産要素ではないということである。それら...

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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