TOP 理論で固める経営戦略 “細胞”の集合体のような組織 ーー“アメーバ経営”との類似性

2019/03/15

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理論で固める経営戦略

第17回

“細胞”の集合体のような組織 ーー“アメーバ経営”との類似性

  • 経営
  • 佐々木一寿 作家、経営者JP総研客員研究員

 

前回、ティール型組織の形態イメージとマネジメントチームのメンタルモデルに焦点を当てて、パラダイム・チェンジの方法論を述べてきた。今回はティール型組織の特徴を、日本発の「アメーバ経営」との類似性で考察していく。これによって、日本企業はティール型組織を取り入れやすくなるかもしれない。

 

■7つのパラダイム

■ティール型組織の、3つのブレイクスルー

 

  • セルフ・マネジメント(自主経営[self-management])
  • ホールネス(全体性[wholeness])
  • 存在目的体現(エボリューショナリー・パーパス[evolutionary purpose])

 

◇『ティール組織』は独創的か

私が『ティール組織』を始めて手に取ったのは、2018年の2月頃だったと思う。寒い日で、次のアポの現地に早く着いてしまい、目的もなく立ち寄った書店で、その分厚い緑色の新刊を手に取りパラパラと頁をめくり、すぐに棚に戻した記憶がある。その場で買わなかったのは、アポ巡りの際にかさばりそうということよりも、同種の組織論をすでにいくつか読んでいて、同種の組織論の本もすでに書いていたからだ。「アンチ・ヒエラルキーの本か、だいたいこの手の主張はわかる」という気がしていたのだろうと思う(その後、自身の洞察力のなさを猛省することになる)。

 

実際、アンチ・ヒエラルキーの組織論自体はそれほど珍しいものではない。ヒエラルキー組織の弊害に関してはかなり早期から指摘されていて、それへの対処法の考察は組織論(organizational theory)分野の主要をなす大きなテーマである。いまや「組織はヒエラルキーでよい(最良、最適だ)」という主張の方がむしろ珍しいだろう。きっと「ティール組織」という新語を使って、アンチ・ヒエラルキー組織論を展開しているのだろう。今風のスタイリッシュな表紙や目次の凝ったターミノロジーを確認して、私はそう早計してしまった。

 

そしてほどなく、何人もの同僚や研究者から多くの評判を聞き、感想を訊ねられることも重なり、あわてて本書を買い精読してみると、不思議な感覚におそわれた。アンチ・ヒエラルキーの組織論を総覧・整理したような懐かしさとともに、実践面での革命的な匂い、そして総じては(癒されるような表紙とは真逆の)野心溢れる硬骨な主張に満ちていたからだ。

 

 

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プロフィール

  • 佐々木一寿

    佐々木一寿

    作家、経営者JP総研客員研究員

    作家、リサーチャー。横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業、大手メディアグループの経済系・報道系記者・編集者、ビジネス・スクール研究員/出版局編集委員、民間企業研究所にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『経済学的にありえない。』(日本経済新聞出版社刊)、『「30分遅れます」は何分待つの?経済学』(日経プレミアシリーズ、日本経済新聞出版社刊)などがある。